2nd season

□超劇場版 ケロロ軍曹
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日向家の車庫に車が収納され、一人の女性が出てきた。彼女の名前は日向 春陽。
たった今仕事場の西澤家から帰ってきたのだ




『あらら?義姉さん、今日は帰ってこないのかな』




彼女の義姉の、日向 秋のバイクが無い事を確認し、お土産を片手に家へと入った
家はやけに静かで、リビングに行くと義姉の娘の長女、日向 夏美がソファに座りながらまったりとテレビを見ていた




『なっちゃん、たーだいまぁ♪』


「あ!ハル姉さんおかえりなさい!」


『今日なんか大分静かじゃなぁーい?』


「静かなくらいが丁度いいわよ」


『そーぉ?
あ、そうだ。は〜い、お土産のケーキだよぉ〜ん♪
フー君と一緒に選んでねぇ〜』


「え!ここ今有名な所のじゃない!?」


『うん!前にほらぁ、なっちゃん食べたがってたじゃん?ケロくん達も気になってた所だしぃ〜
今月のご褒美第一回目だよ〜ん♪』


「わぁ〜!ありがと〜♡」


『どーいたしまぁーしてぇ〜♪』




春陽は、喜びながらはしゃぐ夏美を満足気に見たあと、我が家の居候のケロン人達用のケーキを持ち、リビングを後にした
1度自室へと戻り荷物やら服を着替えると、部屋の電気の横に着いてある渦巻きマークの着いたボタンを押した。
すると足元に穴が出現し、瞬く間に春陽は落ちていった
綺麗に着地を決め、白く長い廊下を迷うこと無く歩き、彼等を探し始めた

数分後、ケロロ小隊の参謀のクルル曹長が作り上げた超リアル訓練所シュミレーター室に入ると、隊長以外のケロロ小隊が集まっており、シュミレーターで地球侵略に励んでいた




『おやおや、皆さん勢揃いで〜♪
…1人足らんけどもー』


「クーックックックッ。
何か用かァ?春陽」


『お土産を買ってきたからさぁ、ちょーっとお邪魔するよぉ〜、クルくん』




モニターから目を離さないクルルに、春陽はイスを運び隣に腰掛けた
2人の目の先には、タママが数体の偽アンゴル・モアを吹き飛ばす所であった




『(相変わらずモアちゃんへの嫉妬は健在だねぇ〜♪)』




何処か楽しそうに見つめる春陽。
すると、訓練が終わったのか、景色は変わり、ドーム型の白い壁が姿を現した
クルルは直ぐにフライングボードに乗り、皆の元へ向かった




「クックックー
これでペコポン侵略38回クリアだぜェ」


「やったですぅー!!」


「記録更新か」


「軍曹さんがいないと心做しか訓練も捗るですぅ」


「珍しくドロロも参加してるしなァ」




画面に映る彼らの言葉を聞きながら、春陽はぼーっと彼らを静かに見ていた




『(38回も侵略……彼等が本気になれば簡単に地球は制圧されてしまうだろうね
…でも今の今まで侵略されないのは、ケロくんのせいなのか否か)』




心の中でそんな事を考えながら、目の前の機械に目をやり、悪い笑みを浮かべた




『んーっとぉ、これこーして、あーして………よっと』




瞬間、クルル達のいる部屋の背景が、日向家の和室に変わった




「な、何だ?」


「和室に変わったですぅ」


「こりゃ春陽の仕業だなァ」


「春陽殿でござるか?」




そんな会話をしている4人の元に、春陽は飲み物とケーキをお盆に乗せ現れた




『やあやあ、皆さんお疲れ様でぇ〜す♪』


「ハルっち!!」


『やっほー、タマくん
皆に差し入れあるんだけどぉ、ここいらで休憩でもどぉだ〜い?』


「差し入れですかぁ!?」


『そそ、ケーキだよーん!
さ、席に着いた着いた』




皆それぞれ座り、タママを軸に、ギロロ、ドロロ、春陽で机を囲んだ
因みにクルルは春陽の膝の上である




「あ!ここのケーキ屋さん、ももっちの家で食べた事あるですぅ!
すっごく美味しかったですぅ!!」


「夏美とケロロが話していたケーキ屋か」


「小雪殿も話していたでござる」


『そーなんだよねぇ
だから、仕事帰りに買ってきちゃったのよ〜
皆好きなの選んで食べて〜♪』




春陽は4つのケーキを真ん中に置き、タママにはココア、ドロロとギロロにはお茶、クルルにはブラックコーヒー、自分には紅茶を前に置いた




「わーい!!ありがとうですぅ!」


「かたじけないでござる
ただ…小雪殿にも食べさせてあげたかったでござる」


『そこはご心配なくぅ〜♪
冷蔵庫に小雪ちゃんの分も入ってるから、持って帰ってあげて〜』


「本当でござるか!
春陽殿には感謝してもしきれないでござる」


『お気になさらずにぃ〜』


「全く、今さっきまで地球侵略に向けての訓練をしていた俺達に差し入れとはな」


『んー、別に気にしなーい』


「甘い奴だ」


『うん、ケーキは甘いよ〜♪』


「違うっ!俺が言っているのはケーキじゃない!」


『あら〜?クルくん、食べないのー?』


「人の話を聞け!!」




それぞれがケーキを取る中、クルルはレモンパイを手に取るも、フォークで1口だけ口に運ぶだけだった
そして、コーヒーを片手に春陽の膝の上から降りた




「オレはやる事があるからな、ラボに戻るぜェ」


「……行っちゃったですぅ」


「いつもの事だろ」


「…春陽殿?どうされたでござる??」




部屋を出ていったクルル。その扉を何も話さすただただ見ていたい春陽に気づいたドロロが声をかけるも、少し遅れて春陽はドロロを見た




『んー。クルくんこの前私が作ったレモンパイを2個食べてたんだよねぇ〜』


「えっ、あのクルル先輩がですかぁ?!」


『そうそう!
だから、レモンパイなら食べれるのかなぁと思って買ってきたんだけど……本当は好きじゃないのかなぁ?
あの時も無理やり食べてたりーとか思ってさぁ』


「彼奴が人に気を使える奴だとは思えん
気にする事はない」


『んーーーーー。』




春陽は納得できていないようであったが、クルルが残した残りのレモンパイを口に頬張った




『ん〜、レモンパイうまうま〜♡
これはリピート商品ですなぁ〜』




何だかんだでゆったりとしているギロロ達を、春陽はレモンパイを食べながら満足気に微笑んでいた
少しすると、春陽は紅茶と食べ終わった皿を持ち、立ち上がった




「あれ、もう行っちゃうですかぁ?」


『うーん。
ポールさんから追加で書類を任されててねぇー。明日中って言われてるからそろそろやらんと〜』


「そうですかぁー」


「ケロロの奴もこれくらい熱心にしてくれたらいいんだがな」


『そーおー?私はいつものケロくんがいいけどねぇ〜♪
あ、そうそう。モアちゃんとケロくんの分のケーキも冷蔵庫に入ってるからさ、後で言っといてあげて〜
そんじゃ、ごゆるりと〜♪』




春陽が部屋を出ていく姿を、ドロロは黙ったまま見つめ、ポソりと呟いた




「……春陽殿、さり気なく拙者達のお皿まで持って行ったでござる…」






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