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□プロローグ
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森の中の整備されていない道を、1台のタクシーが上下左右に揺れながら走って行く。

「2ヶ月、1ヶ月半、えーと3ヶ月、2ヶ月……」

後ろの座席には2人の少女が座っていた。タクシーの天井を焦点の合わない目で見つめ、指折り数えているのは左側の少女である。

「前の街は楽しかった?」
「えー、どうだろ。いつも通りかな」
「つまりつまらなかった、と」

右側の少女は呆れながら、大きな地図を膝の上に広げる。

「次の街はハッピーツリータウンっていう街。ちゃんと覚えてる?」
「覚えてるよー。あっ、運転手さん。ハッピーツリータウンまでどのくらいかかるの?」

運転手はバックミラー越しに少女たちをちらりと見た。

「おめぇさんら、行く場所を聞いたときから思っちゃいたが…、噂を知らねぇのかい?」
「噂?……どんな?」
「その街に入ったら帰って来れねぇっていうおっかねぇ噂だ。その噂のおかげで、上からその街に入ったらいけねぇんだ。だから送れるのはもうちょい先までだ。そっからは歩いてくれよ?」

少女たちは顔を見あわせて口を揃えて言う。

「別に根拠もないんでしょ?」
「さぁ、詳しくは知らねぇ。俺はそんな噂知ったこっちゃねぇからな。まあ、上からの命令は絶対だ。人がいなくなっちゃあ、会社としては大問題だからな」
「ふーん、そういうもん?」
「そういうもんだ。GPSも付いてるから送ったら即バレだ。今も向かってるから監視されてるだろうな。ああ、ここまでだ。荷物下ろしてやるよ。さあ出てった」
「ありがとう、運転手さん」

2人分の大きな荷物を降ろしている運転手に少女が礼を言う。

「あー、やれやれ。ここからは一本道だ。迷うことはねぇだろう。ただ、20分から30分はかかるからな。気を付けていけよ」

2人はまた運転手に礼を言うと、キャスターにより負担が軽くなった荷物を持ってタクシーから離れていった。

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