ただキミといたいだけ
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森の中にある細い道を、数人の男と小さな子供が1人進んでいく。
辺りを見渡しながら隠れるように。
先を進んでいくと、隠れ里が見えてきた。
「風舞!よくきたな!」
「桜火!久しぶりだな!」
村から、男が笑顔を浮かべて村に来た男達を出迎える。
長旅疲れただろうと、桜火という男の家に迎えられる。
囲炉裏を囲み男達は、積もる話に花を咲かせ、その宴会の酒やら肴やらを桜花の正室、陽炎とお手伝いが準備をする。
「風舞、そういえば、今回連れてきたその子供はもしかして…」
ほろ酔い気分の桜火が、風舞の横で大人しくしている子供に目をやる。
風舞は今までにない、だらけきった笑顔を浮かべ子供の頭を撫でる。
「名無しというんだ、俺の子だ。可愛いだろお〜〜」
親バカという言葉がとてもよく似合う。
名無しは呆れたように溜息を吐く。
「父上、シャキッとして下さい。風影頭首とあろう者が、そんなだらけきってどうしますか。火影頭首である桜火様を見習ってください」
風舞の手を振り払い、ジロと睨む。
相変わらずニコニコしている風舞は、クイと酒を飲み干す。
「たまにはいいだろう、名無し。唯一無二の親友と酒を飲み交わしているのだ」
堅苦しいのは無しだ、と桜火と再び盃を交わす。
桜火はじいっと名無しを見る。
「桜火様、ご挨拶が今更になり申し訳ございません。改めまして、風影頭首、風舞の娘の名無しと申します。いつも父がご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「お、おぉ…」
名無しにつられて、思わず頭を下げる桜火。
「風舞、、本当にお前の娘か!?礼儀正しすぎるぞ!?」
「いかにも、俺の自慢の娘だ!」
自慢げに笑う風舞。
名無しは再び呆れたように溜息を吐いた。
「名無し、俺にも自慢の息子がいてな…」
名を紅麗、烈火。
烈火は最近産まれたばかりで、まだ言葉も話せない。
クイとお猪口の酒を空にする。
「紅麗は側室、麗奈との子供でな…名無しと同い年ぐらいだから、遊び相手にでもなってくれないか?」
桜火が真面目な顔でこちらを見ていて。
きっと何が思い抱くことがあるのだろう。
名無しはニコと笑顔を浮かべる。
「もちろんです!」
今頃、家の外で遊んでいるだろう、と桜火に教えてもらいこの場を後にし、紅麗を探しに村の散策を始めた。