ただキミといたいだけ

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数ヶ月が過ぎ、再び火影の里に行くこととなった。

名無しは里に着くと、真っ先に紅麗の家に向かった。
戸をノックせず戸を開ける。

「ただいまー!」
「名無し…?」
「麗奈さん!ただいまです!」

横になる麗奈に駆け寄り、咳き込む麗奈の背中をさする。
突然の訪問者に驚いているようで。

「父上に我儘を言って、来てしまいました」

てへへ、と笑う名無しに麗奈が綺麗に笑う。

「おかえりなさい、名無し」
「ただいま帰りました!」

家を見渡し、会いたい人を探す。

麗奈は、名無しの手を握り口を開く。

「紅麗は今、里の牢にいるの…」
「え…っ」

笑顔が消え、麗奈の顔を見る。

まだ赤子の烈火の頬を小刀で刺したらしい。
口内に達するほどの傷で、その場で里の者に取り押さえられたらしい。

呪いの児の烙印を押されたこと、村八分にされたこと、烈火に対して深い恨みを抱いていた。
名無しが帰ってから、里からの扱いに拍車がかかったこと。

全てが紅麗を苦しめていた。

名無しは立ち上がり、すぐに出かける支度をする。

「どこへ…」
「紅麗くんのとこ!紅麗くんに会いにいきます!」
「名無し、」

草履を履き、笑顔を浮かべ麗奈を見る。

「紅麗くんに約束したの。すぐに戻ってくるって。待ってて、って」

だから会いに行くの、とどこにあるかわからない牢に向かって走り出そうとする。
そんな名無しを麗奈が止める。

「待ちなさい、名無し!」
「は、はいっ!」

思わず、背筋がピシッと伸びる。

火影頭首の側室ということを忘れていた訳ではないが、改めて実感する。
凜とした態度。

「紅麗は里の外れにいます。牢の中でも奥の方にいます。見張りもいます。今の紅麗に貴女は…」
「大丈夫だよ、麗奈さん。あたしは友達に会いに行くんだよ」

ニコッと笑うが、どこか威厳を感じる。

そうだ、この子は名無しだった…

麗奈は小さく微笑い、名無しを見送った。
取り急ぎ、鳥の脚に手紙を巻き、桜火にこの旨を伝えた。
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