ただキミといたいだけ

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「すまない…こんな話をして」
「ううん、その、、何も言えなくてごめんなさい…」

風舞の元に戻る道中。

まだ村を知らない名無しを、紅麗が途中まで送ってくれた。

「いいんだ、ただ知っておいてくれればいい」

それで、これからどうするのか考えてほしい。
風影頭首の娘として。

紅麗はそう言うと、名無しの手をぎゅと握る。
名無しは、負けじと紅麗の両手をぎゅと抱きしめるように握り、紅麗の目をまっすぐ見つめる。

「紅麗くん!明日も一緒に遊ぼうね!迎えに行くからね!」
「あ、あぁ…」
「風影とか火影とか関係なしで、あたしと紅麗くんなんだからね!」

名無しが何を言っているのかわからなかったけど、何を言いたいのかが伝わって、涙か溢れそうになった。
こくんと小さく頷くと、名無しはニコっと笑って。

「えへへっ、それじゃまた明日ね!紅麗くん!」

ありがとう、と大きく手を振って名無しは行ってしまった。
ぎゅと拳を握り紅麗も家に戻った。

火影の隠れ里にいる間、ずっと紅麗と麗奈と共に時間を過ごした。
楽しい時間というものは、あっと言う間に過ぎてしまうもので。
気がつけば、風影の里に帰る日が明日に迫っていた。

風舞に頼み、今夜は紅麗と麗奈の家に泊まる許可を得た。
夜、涼しい風が吹いて、虫の音が心地よい池のほとり。
紅麗に出会った日に休んでいた岩に紅麗と腰を下ろしていた。

「明日…戻るのか?」
「そうだよ〜。まだまだ紅麗くんと麗奈さんと一緒に遊びたかったけど、一回戻らなくちゃ…」

帰らなきゃ里のみんなに心配かけちゃう、と膝を抱える名無し。
まるで自分に言い聞かせるようで。

くい、と体が紅麗の方へ傾く。
紅麗にぎゅと抱き寄せられていて。
紅麗を見上げるが、表情がよく見えなかったけど小さく震えていて。

「名無し…行かないでくれ、、」

今にも消えそうな声。
きゅ、と胸が痛む。

名無しは紅麗に向かいあい、全身で紅麗をぎゅうっと抱きしめる。

「明日、あたしは帰るけど、紅麗くんのこと絶対忘れないし、またすぐに戻ってくる!それまであたしのこと待ってて!」

ニコッと紅麗を見て笑う。
月明かりに照らされる名無し。

紅麗は名無しの頭に手を回し引き寄せる。

「くれ、っ」

フニと唇に暖かい感覚。
コツンと額が合わさって、紅麗の瞳が目いっぱいに広がっていて。

「絶対だぞ」
「っ、うん!約束!」

紅麗に飛びつくように抱きつく。

ゴロンと寝転がり星を見上げる。
自然と目が合って、どちらともなく誓い合うように唇を重ねた。
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