飛花落葉
□審神者
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「審神者?なにそれ」
広い邸宅に訪れた客は誉を審神者へと導く者達。刀剣を従え、敵を倒す。そう説明されが誉の口から出た一言はあっけないものだった。
「あー、俺そうゆうのいいんで」
帰ってもらっていいですかと大きなソファから腰を上げる。
「お待ち下さい。...これを」
男から渡された物は菓子折り。中を開ければここでは珍しい菓子が並んでいる。
菓子、只、それだけだった。
「京の菓子ですか...。でもちょっとそれはね無理がありますよ」
「もし承諾していただければ貴方の両親のこと、こちらで調べさせますが...」
少し反応を見せた誉は溜息をつき、渋々承諾した。
誉の両親。どちらも身体が弱く、誉が十の時、姿を消した。消息は今も不明だが既に亡くなっていることを誉だけは知っている。問題はその亡骸の居場所だけが不明であったのだ。
最初の選刀をけだるげに始める。
目の前にある打刀の中の真ん中に目を惹かれた。
「この真ん中ので」
5本の刀から一つを選ぶ。手にした瞬間風に舞う桜吹雪の中に人影が浮かんだ。
「俺は山姥切国広。足利城主長尾顕長の依頼で打たれた刀だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
金髪が綺麗な自分と同じくらいの歳の青年が姿を現した。見るからに誉とは合わない雰囲気を醸し出している。
「では、よろしくお願い致します」
男達が屋敷を去った後、沈黙が流れた。
「お菓子でも食べる?」
「...」
「折角だから俺の手作りの方がいいかなぁ」
冷蔵庫からプリンを一つ出して山姥切にあげてみた。
「...うまいな」
初めて明るくなった表情に思わず誉の顔も緩む。
「よかった。これからよろしくー」
「...あぁ」
次の日から山姥切は誉に振り回されてばかりだった。起きたら屋敷のどこにもいない。探したら庭の木に寄りかかって本を呼んでいる。またいないと思えば今度は散歩に出かけていたなど。
出陣もしてくれ手入れもしてくれるが、審神者としての意識が薄すぎる。
これで敵に襲われたりでもしたら洒落にならない。
「おい」
「山姥切...出来た...!」
台所にはお菓子の家を今完成させたところの誉がいた。きらきらと目を輝かせている誉に今日もまた何も言えないのである。