飛花落葉

□兄弟
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「主ー!平野が来たよ!」

ヒラヒラと桜が舞う部屋に足を踏み入れるとそこには紛れもない平野藤四郎の姿。
しかしここに顕現した平野は聞いていた様子とは何かが違っていた。

「いち兄早く!」

乱や他の兄弟が裾を引っ張り一期を連れてきた。

「平野...よく来てくれました」

一期を見た平野は貼り付けられた笑みで残酷な言葉を一期に放った。

「ご無沙汰しております、一期一振様」

粟田口の短刀でそんな口調で一期に話しかけた者はいない。まるで距離をとっているかのようなその一言。他の粟田口のようにいち兄と呼ぶことは無く、微妙な距離が開いていた。

「と言っても、他の兄弟とは普通なんだよな」

窓から外を眺める誉は鳴狐と2人で部屋にいた。
ショックを受けていた一期は特に詮索することもなく平野の状況を受け入れていた。沢山兄弟のいる一期にとって平野のよそよそしい態度は思った程深刻な状況にもならなかったのであろう。

「気にしてはいるみたいだ。どうにかしてやれないのか?」

「そんな事言われてもな」

鳴狐も少し心配したように誉に頼む。
どうにか出来るものでもないだろうと誉は本を読み始める。

「まぁ、俺なりに話してはみるけどさ。期待はしないでくれよ?」

ちらりと窓の外の平野を目の端で捉えた。
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