短編集

□金魚
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ぱしんと空き教室で音が鳴る。
聴こえてきたのは男子生徒の荒い息遣いと怒号の声。
口を開く事が無駄だと分かっていた在眞は、自分の頬を叩いた人物を見ていた。
まるで他人事のように。

「てめぇだって雲雀に散々やられてんだろうが!黙ってないでなんとか言えよ!」

風紀委員になってから何度目だろう。
雲雀に恨みを持つ輩からの暴力から、雲雀恭弥を潰そうと持ちかけられる事ばかり。
断っても断わってもキリがないこれに段々と飽きていた。
そしてこうゆう時に変なことを思い出してしまうのが在眞の悪い癖だった。
外の烏。その中でも並盛入学当初から着いてきていた頭の良いのが窓の外でじっと2人の姿を見ていた。 

「お前、もういいよ」

数分後、その顔は諦めと嫌悪に満ちていた。
さも変人を見るような、話が通じないとでも言いたげな表情。
また、これか。
自分が兄以外から向けられるその視線は慣れを通り越してしまっていた。
空き教室の扉がガラリと開く。現れたのは並盛の風紀委員長。

「こんな所でまで蔓延らないで欲しいな」

「雲雀っ!」

トンファーで数発、男を殴ると先程まで饒舌だったその男はピクリとも動かなくなった。
そしてその視線はゆっくりと在眞の方へと向く。

「…違うよ。最初は突き、で次が締め」

烏と何を話しているのか。目の前で話していた男が屍になっても尚、気にする様子を見せない。

「何の話?僕も混ぜてよ」

外の烏に向かって投げられたトンファー。逃げた烏を見送りやっと雲雀の方に視線をずらした在眞は嫌なものを見るような目で雲雀を見る。

「私は呼び出されただけです」

「そうみたいだね。君の声、さっきまで一言も聞こえてこなかったし」

「そうなんです。ほんとに最近こういう人が増えてきて」

「だからと言って噛み殺さない理由にはならない」

腹部に直撃する蹴りが胃からせり上がるものを抑えきれなくなる。腹を抱え込む事すら許されることも無く髪を持って引きずられる。

「ちょっ…トイレ…」

「僕の校舎で嘔吐したら許さないから」

並盛中の校舎には今日も平和な殴音が響いていた。
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