悔いなき選択

□act. 05
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♪〜♪〜♪〜♪〜

♪゙м♪゙м♪゙м♪゙м


近づくにつれて交互に聞こえてくる、テノールと不協和音のような怪音波に、思わず耳を塞ぐ。


リヴァイ「ッ… あいつを黙らせる方法はあるか?」

ヴィレ「確か あの爺さんは歌で食いもん貰ってるんだろ? 可笑しな事吹き込まれてなけりゃいいが… イザベルの口に コイツを放り込む(投げ入れる)のはどうだ?」


そう言って、ポケットから袋に入ったクッキーを取り出して投げつけるジェスチャーをする。

リヴァイ「いや 誤咽の危険があるから駄目だ!」

ヴィレ「じゃあ… リンゴ?」

リヴァイ「何でお前は食いもんを投げる発想しかないんだ!」

ヴィレ「これ以上彼処に近づいたら 僕の耳が使い物にならなくなる!!」


ギャーギャーと言い争っているのに、その声すらイザベルの怪音波にかき消されるのだから、相当な被害である。

生まれつき耳が良過ぎるヴィレにとっては、耐え難い苦痛だった。


ヴィレ「あ〜 クソッ!! 耳が…」

リヴァイ「ッチ… オイ!! イザベルッ!! 帰るぞ!!」


〜 イザベル side 〜


イザベル「あ゙〜〜♪ あ゙〜〜〜♪」

リヴァイ「…イ ……ベルッ!! か……ぞ!!

イザベル「(ん? 今 リヴァイ兄貴の声が聞こえたような…)あ゙〜〜♪」

老人「お嬢ちゃん 彼処からずっと 呼ばれているようじゃが? 行かんでいいのか?」



そう言って老人は、リヴァイ達3人の方を指差してイザベルへと声をかけた。


イザベル「Σあっ リヴァイ兄貴とヴィレ ファーランだ!! じいさんありがとう!! あっ…それと なぁ また此処に来てもいいか?」

老人「……… 好きにしなさい」

イザベル「おう!! じゃ またな じいさん!!」


老人と別れて、イザベルは自分を待つ3人の元へと駆け出した。


リヴァイ「遅い! イザベル!! 後一回呼んでも来なかったら コイツがお前にリンゴを投げつけてた」

イザベル「Σマジで!?」

ファーラン「ヴィレはやたら耳が良いからな… 普通より大音量で聞こえるらしい」

貴女「仕方ねぇだろ 生まれつきなんだし… だいたい 音の反響具合とかで 空間把握して索敵とかしてるんだから…鼓膜が破れて耳が使い物にならなくなったら一大事だろ?」

イザベル「そうなのか?」

貴女「!?Σテッメ!!!! 他人事だと思って!!」


リヴァイとヴィレはイライラしながら、ファーランはそんな2人に呆れたように、イザベルは他人事のようにそれぞれ言い合う。

ギャアギャアと言い争いに発展するイザベルとヴィレに、リヴァイが拳骨(リヴァイ的にはかなり軽く)を落として止めさせたらのは、それから数分後の事だった。

〜 アジト 〜

イザベル「って〜!! 痛い!! 痛い!!」

貴女「大人しくしてろ そうしないと お前の額に出来た傷の治療(手当て)が 出来ねぇだろうが……」


イザベルは、消毒液を染み込ませた脱脂綿を摘んだピンセットを左手で、消毒液の入った瓶を右手で持ち、治療を施していたヴィレから逃げていた。


イザベル「うぅぅっ… こんくらいすぐ治るって言ってんじゃん!!」

貴女「馬鹿か!? 此処の(地下街)環境を考えてみろ 破傷風になったらどうする気だ!!」


こうなったのは数分前。アジトへと帰路についていたその道中、段差を踏み外して盛大にズッ転けたイザベルは、その段差に強かに額をぶつけた為である。


イザベル「それはヤダ!!」

貴女「だったら大人しくしてろ」


渋々ソファーへと座ったイザベルは、ヴィレからの治療を受けた。
ヴィレが、医療用の針と糸を取り出した時には、流石に顔を青ざめさせていたが、そうでもしないとパックリと割れた額の傷口から流れ出る血は止まりそうもなかったので、甘受するしかなかった。


貴女「後は残らないよにした 抜糸はちゃんとくっ付いてからだな だいたい2週間といった所か… 今日と明日は此処(アジト内)で大人しく留守番して安静にしてろ 治るもんも治りが遅くなるからな」


ヴィレからの諸注意を受け、イザベルは自室へと戻ろうとしたが、「待て」と言われ、それは叶わなかった。
イザベルを引き止めたヴィレは、キッチンへと歩を進め、冷凍庫から氷を取り出して氷嚢袋へと詰め込み、それをイザベルへと渡した。


貴女「リヴァイから脳天にもらっただろ? たんこぶ出来てた ちゃんと冷やしとけ」


それを受け取ったイザベルは、今度こそ自室へと戻り、ヴィレの言うとおりに大人しく過ごした。

数日後から、イザベルは約束通り、あの老人の元へと足繁く通うようになったのは、また別の話しである。
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