鬼灯夢

□02
1ページ/4ページ


「麻耶さん。お茶を。」

「あ、ワシにはココアお願いね。」
私はパタパタと法廷を走る。
拷問も人を痛めつけるのもNG
そんな私の仕事場は鬼灯様の秘書とか補佐ではなく『護衛』

「こんな判決納得できるか!」
亡者が獄卒の腕を払い鬼灯様へ向かっていく
「麻耶さん!頼みましたよ!」
バリトンボイスが私の名を呼んだ。

「はぁあ!」
素早く鬼灯様の前に立ち。
丸腰で向かってくる亡者に鞘に納めたままの霧伏を叩きつける。

「麻耶ちゃんがいると華やかでいいねぇ。お仕事もキッチリしてくれてるし。心なしか鬼灯君の機嫌もいいし。」
ズルズルと気絶した亡者が引きづられていく。

「いや、最近の年老いた亡者は凶暴で困りますね。さて、麻耶さん。桃源郷の方へ共に視察へ行きましょう。ものすごい嫌ですが。」

「はい。仙桃の管理主さんの素行確認と閻魔様の腰痛の薬の受け取りですね。嫌とか言ってはいけないですよ」
途中で食べるお弁当とあっちで使う資料をカバンに詰める。

「じゃあ。2人とも気をつけてね。特に麻耶ちゃん」
私に特に。と釘を刺した閻魔大王様

「時間が惜しい。麻耶さん朧車を呼んでください。私は資料と金棒を持ってきます。」
私はその言葉にすぐに朧車の手配をする。金棒を持つだなんてこれから行くとこはかなり手練がいるのだろう。
私は気を引き締めた。
そして、行先の極楽満月さんへの連絡をしなければと思う。
極楽満月への視察は急に行うらしいが一応直前に連絡すべきだろう。

「あぁ、麻耶さん。極楽満月に関してはアポ取りは不要です。と言うか電話するのは辞めなさい。」

「でも...鬼灯様...」
それじゃあ、先方が困るんじゃ...と言おうとしたらものすごい形相で睨まれる。

「いいですね?」
バリトンボイスが私に言う。
有無を言わさないこの圧力。

「はい!すいません!」
こちらに来てひと月程経つが、やってる事は昼食の手配・次のスケジュール確認・訪問先のアポ取りなど...
護衛として働いたことなどほとんど無い。
そして鬼灯様。
笑わない。怖い。強い。仕事ミスしない。完璧すぎだろこの人。
護衛(私)いらないだろ

慣れない私にも厳しい指導があった。
金棒で1発やられたり、土に埋められたり...。いやぁ、針山に投げ飛ばされた時は死を覚悟した。

そして!鬼灯様と言う呼び名に関しては鬼灯様の指定だ。
礼儀に厳しいらしく、「様」と付けなかったら血の池に沈めるぞと言われた。
朧車に乗り込んで項目を確認している間も終始無言の鬼の形相

「怖い...」

「何か言いましたか?」

「いえ...」
第一せっかく貰った仕事場に対し文句を言う勇気がない

「麻耶さん。」

「はいぃ!」

「貴女は外で待ちなさい。極楽満月主人との話は私1人で付けてきます。」

外で待てと言うのだから従うしかない。頷くと鬼灯様は多少眉の角度を緩めた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ