鬼灯夢

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「では麻耶さん。ココで待っていてください。」
ココと言われましてもウサギが跳ね回る庭しかありまへんがな!

はぁ...とぬるい返事をすると鬼灯様は極楽満月へ入っていった。

肩を落として周りを見ると美しい風景
桃が実り青々と葉を瞬かせる木々、風に乗ってアルコールの臭いがする不思議さ。
...ここが天国!すごい!

1番大きな木の1番上にある桃。
目を引く鮮やかさに手を伸ばしたくなる。
そこで何を思ったんだろうか、木に登る。甘い香りが私を包んだ。

死んでひと月。中々ハードだった。
上司(鬼灯様)の厳しい指導や慣れない環境。その歪みが行動に繋がった。

「桃だ!」
ちょっとした出来心だった。
1番上にある桃をもぎ取った。
その時だった!

「うわぁ...!」
枝が折れる!私は桃を持って目を閉じる。
しかし、待てど暮らせど痛みは来ない。何かの上に着地したようだ。

「天使が降ってきたのかな?って言ってもここが天国なのにね。」
鬼灯様にどことなく似ている男性の上に着地していた。
ものすごい勢いで男性の上から飛び退く
「ご、ごめんなさい!重かったですよね!?」
すると彼はヘラヘラと否定した。

「重いだなんてとんでもない!それより君はとても優しい子なんだね。」
彼は私の髪に指を通し、ひと房を持ち上げる

「と、とにかくありがとうご...」
言葉が止まる。唇に彼の指があたる。

「いいよ。気にしないで。それより...君の名前は?」
ドキッとした時には遅い。
顔が近づく、彼の香りなのだろう。
薬品の香りが鼻につく。
細身の目から覗く彼の瞳に動けなくなってしまう。

顔に熱が集まる。
実はわたくし。圧倒的に恋愛偏差値が低い。
それがこんなイケメンに見つめられればこうもなる。

「ねぇ今晩ヒマ?君と仲良くしたいだけなんだよ」
慣れない感覚に目を閉じる!

「麻耶さん何処にいるんですか!」
鬼灯様が私を探しているようだ。
思わず私は「ヒィ...!」と声を挙げる

「え?なんでアイツいるの?ていうか君アイツの知り合い?」

「鬼灯様は上司です。それで私は護衛です。」

「アイツにこんなかわいい護衛いるの!?て言うか護衛いらないだろ!」
その通りだと思う。だけど逆らえないのだ。怖いし。

重苦しい金属音が地面に落ちる。
ゆらりと鬼灯様が歩いてきた。

「すぐにその汚い手を離せ」
いつものバリトンボイスの2割増ぐらいの凄みで話す鬼灯様を見て先程まで赤らめていた顔が青ざめた。

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