・haikyu-!!
□君の好きなものを送ろう。
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side国見
__3月25日。
部活が終わって学校から出ると、すぐそこに無愛想な顔をした奴がいた。
「…影山?」
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「なんで、いんの。」
「…これ。」
「え?」
手渡されたのは、コンビニの袋。
中には、見慣れた小さな箱。白地に赤と青のデザインは、フランスをイメージさせる。
塩キャラメルだ。
「なにこれ。」
「誕生日プレゼント。」
「…影山が?俺に?……雪でも降る?」
「降らねぇよ。3月だぞ。」
「知ってるけど。」
ものの例えだ、なんてこいつには通じないか。
しかし、なんでまた急に。
というか、
「お前、俺の誕生日なんて覚えてたの。」
いつ教えたんだっけな。
「覚えてるに決まってんだろ。」
ああ、そっか。確か、
「…ならもっといいもん寄越せよな。」
終業式が終わっても、部活は終わらなかった、中学1年の時。
「しょーがないだろ。お前の好きなもんなんて、それくらいしか知らねぇんだから。」
及川さん達も来て、なんかパーティーらしきことをした気がする。
「別に、好きなものじゃなくてもいいのに。」
あん時も、影山は塩キャラメルをくれた。
『お前、今日誕生日だったのか!覚えとく!』
なんて言って。
「誕生日には好きなもんもらいたいんじゃねぇの?」
懐かしい。あの頃の影山は、ただただ純粋なバレー馬鹿だった。今もバレー馬鹿だけど。
俺はきっと、そんな呆れるほどのバレー馬鹿のことが、好きなんだろう。
「好きなやつから貰えるんだから、別になんだって嬉しいじゃん。」
「…は?」
学校離れて、もう言う機会も無くなったけど。
好きって気持ちは、案外無くならないもんなんだな。
でも、どうしてこいつは、LINEでもそんなに話さないくせに、プレゼントなんて渡しに来たのだろうか。
おめでとう、とたった5文字打ってくれるだけでいいのに。
「なぁ、影山………ん?」
横を見ると、さっきまでいた影山がいない。
「…影山?」
振り返るとしゃがみこんでいる影山を見つけた。
「どしたの。」
「…国見、俺のこと好きだったのか……?」
「、はあぁ?」
え、バレてた…!?
「なんで、」
「だって…!今好きなやつって言っただろ…!!」
「あ。」
色々考えながら話していたせいで、どうやら本音がこぼれていたらしい。
「あー…いや、えーと……。」
なんとかして誤魔化さないと、こいつに嫌われるのは嫌だ。
…いや、もう隠すのも無理かな。だって、
きっと今、
誤魔化せないくらい顔が赤い。
「国見。」
「はい…。」
「その好きって、どの好きだ…?」
「…好きだよ影山。恋愛的な意味で。気持ち悪いと思うかもしれないけど、俺はお前のこと、中学の時からずっと好き。…ごめんな。」
「なんで謝るんだよ。」
「えっ…迷惑だから……?」
「迷惑じゃない!!」
「!?」
急に叫んで立ち上がった影山につられて、俺もゆっくり立つ。
ほぼ同じ身長、目線の先。顔を赤くした好きなやつ。
「俺も、レンアイ的な意味で国見が好きだ。」
「へぇ…じゃあ両想いだね。」
「嬉しくないのか?」
「ううん。……すんごい嬉しい。」
へへ、と頬を少し緩めると、影山は『国見が笑った!』って言って目をキラキラさせた。
今年の影山からの誕生日プレゼント。
俺の好物の塩キャラメルと、
ずっと好きだった影山飛雄。