夢追い人【進撃】
□3話
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教官の声がかかって、エレンのベルトが上にどんどん持ち上がっていく。
出だしは順調っぽい。
姿勢もなかなか綺麗で、寧ろ昨日ひっくり返ったのは何かの間違いだったんじゃってくらいだ。
エレンの足の裏が完全に地上を離れた。でも、エレンはバランスを崩していない。
これなら……!
辺りから歓声が聞こえる。
私の心配はよそに、ミカサの言った通りエレンはどうにかなった。やっぱり、幼馴染って深いんだと思わざるおえない。
そう安心したのも束の間
「うっ……ぐ、あぁ!?」
「!! 」
エレンの上体がバランスを崩してひっくり返った。不自然に。
どう考えても姿勢は良かったのに。アルミン達も驚いている。
でも、不自然に感じても、これがエレンの運命なら私達がどうこう言うのはお門違いかもしれない。
「……」
教官が何かに気付いたように目を細めて、エレンに近づいていく。
エレンが焦って上体を起こそうともがきながら弁解しようとする。
「教官、ま、まだ、まだ、俺は……! 」
そんなエレンの声を無視して教官は非常にも「下ろせ」と一言だけ。
「お、俺はっ……」
その場に正座して、泣きそうな声のエレン。
そんなエレンに、きっと言えないだろうから心の中で別れの挨拶を伝えよう。
……エレン、短い間だったし全然喋ったりもしてないけど私は会えて良かったって思ったよ。
よかったら、開拓地に行っても忘れ
「ワグナー。イェーガーとベルトを交換しろ」
あれ?
「は、はい!」
教官は、エレンに開拓地行きを言い渡す訳ではなく、なぜかトーマスに声をかけた。……え?
そして、エレンはトーマスのベルトでもう一度挑戦した。
……浮いた。それもひっくり返ったのが嘘みたいな安定感で。
「装備の欠陥だ。貴様が使用していたベルトの金具が破損していた。
ここが破損するなど聞いたことはないが……新たに整備項目に加えておく必要があるな」
それを聞いて、周りは「あいつ、壊れた装備で一時は……」などとそれぞれが感嘆の声をもらす。
「で、では……適正判断は」
「問題ない。
修練に励め!」
それを聞いたエレンはガッツポーズをとる。
そりゃあれだけ不安を煽られたけれど大丈夫だったんだ。出来たときの喜びは私の比じゃないに決まってる。
ちなみに
「どうだ!」と言わんばかりのエレンの眼差しを受けて、ミカサが「エレンが私といれる事を喜んでいる」
と言ってたのと
しばらくして、エレンが元気に立体起動するのはまた後の話。