夢追い人【進撃】
□4話
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頭よりずっと高いところまでそびえる本棚。
それは、私の探究心を阻む存在に違いないんだ。
欲しい本はずっと上。手を伸ばしても届かない。背伸びも無駄。
台はある。使うのに羞恥心が邪魔してくれる。やっぱり自力で取りたい。
……いや、もう無駄なことはすべきでは無い。せっかくの探究心を羞恥心で諦めるのは悪いこと。やめよう。悪あがきはやめよう。
必死に伸ばし続けた手を渋々下ろす。
それと入れ替わりで私の上を伸びた腕が取りたかった本を軽々と取り上げた。
咄嗟に振り向けば、すぐ後ろには体が。
「取りたかったのはこの本だよね? 」
「うん……」
ちょっと見上げれば、笑ってるマルコの顔が。
「ありがと。マルコ」
「そんな意地なんて張らなくても、言ってくれれば本くらい取るよ? 他に欲しい本ある?」
ぽん、と求めたものを私の手に渡してくれる。
その上でこういうことも言ってくれる。マルコは天然タラシってよく聞いてはいたけれど、本当にその通りだとよく思う。
誰にでもこんな事をしていると分かるくらいには、もう随分と一緒に訓練を受けているつもりだ。
「とりあえずこの一冊で。ね、あっちで一緒に読まない? 」
「いいよ。ちょうど僕も席を探していたんだ」
せめてものお礼のつもりでそう言うと快く了承してくれた。タラシポイント増加。
“ーーそして、彼は何処かで聞いた愛の告白を”
「『月が綺麗ですね』かぁ……」
「ん?」
声を出したつもりはなかったけれど、どうやら隣のマルコには聞こえていたらしい。
「これね、この本だと『あなたを愛しています』って意味らしいんだ。すごいよね
……でもちょっと悲しい話みたい」
もう少し読むとこの本の主人公は意味を知っていたけれど、言われた彼女は知らないらしく「それがどうしたんですか」と返される。主人公は、笑って「思った事を言っただけだ」と言う。
「分かりにくくて伝わらなかった。ってとこかな」
「そうそう」
こういうことには鈍いかと思っていたけれど、そうでもないらしいマルコ。
この後、病にかかった主人公は山へ隠れて人知れず最期を迎える。彼女は主人公の手がかりを探す途中で主人公の読んだ本を見つけて、意味を知って、でも手遅れで。