夢追い人【進撃】
□5話
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「またど真ん中一箇所かよ……」
コニーがすげえ、すげえと褒めてくれてる所悪いけれど、動かない的を狙うのなんて練習すれば誰だって出来ることだ。
私だって別に才能があった訳じゃなく、ただちょっと前まで練習をさせられていたから動かない物くらいは撃てる。
「要は慣れだよ、慣れ。一発一発を慎重に何度も狙えば真ん中くらい当たるようになるよ。
コニーは天才なんでしょ?きっとすぐに上手くなるよ!」
ちょっと褒めたのが効いたのか、素直に返事をして訓練に戻ったので、私もただ的の真ん中を仕留めるだけの作業を始めることにした。
「ニーニャって射撃は教えるのすげー上手いよな。」
夕食時。たまたま一緒のテーブルで食事をしてると、エレンがなんの脈絡もなく突然話しかけてきた。
「勉強は教えるの超ド下手なのにな。
ここの数字をここに入れてここの公式をあっちに持ってけばとか、あっちこっちって何処だよって」
「エレン、これは貶されてると受け取っていい発言?」
「いや褒めてんだよ。今日はありがとな」
うーん。たとえ分かり難くとも褒められてるのは素直に嬉しい。
嬉しいんだけれども、エレンに好感を持たれるとミカサから鋭い視線をチクチクと肌に受ける羽目になるんだ。今も現にチクチクと痛い。視線が痛い
「……まあ、教えて貰ったことそのまま受け売りで言ってるだけだからね」
「誰かから教わった技術なの?」
アルミンに聞かれて、やっと自分の小さな失言に気付いて思わず「あ」と、こぼす。やってしまった。けど時すでに遅し。
「うん。うん、教えて貰ったんだ」
焦りを見せないように取り繕う。別にあれだ、大事な部分は言ってない。セーフ、だと思う。
「誰に教えて貰ったんだ? 」
今度はすかさずエレンが聞く。
「えっと……」
……ここを、どう誤魔化そうか。
「その、ごめん。その人に言うなって言われてるんだ
……その人、護身用にって国に隠れて銃器を所持してたから」
「これも秘密の話」と付け加えて言えば、なんとか誤魔化せたのか元々そんなに興味がない事だったからか、それ以上踏み入った話を聞かれる事はなく、すぐ別の話題に切り替わった。
当時はよく分かってなかったけれど、あの人……母さんのしていたことはきっと大罪だった。
結局、それが私を救ったとしても。
なんで、と聞く相手はもういないんだし。きっと永遠にその理由は分からないんだと思う。