夢追い人【進撃】
□7話
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「……それで、話したい事って? 」
あの後、アルミンには先に帰ってもらって今は二人きりだ。
近場の木の下に座り込んで用件を話してもらおうとしている。
「うん。ごめん、心の準備が、申し訳ないんだけど、ちょっとだけ」
けれど、絶賛難航中。
色々言いたことはあるけれど挙動不審に目を泳がせている相手に僕だって無理強いは出来ず、時間だけが経っていく。
「……」
この黙っているままの空間はどうにも気まずい。野暮かもしれないが、何か話しかけようか。
そっちの方がニーニャの気が紛れて言いやすくなるかもしれないし、聞きたいこともあるから、と半ば強引に自分の中で理由付けて、口を開く。
「そういえばさ」
「!?」
僕が話しかけるのを予想してなかったのか大袈裟なくらいに驚いた顔をする(夢主の名前ニーニャ)。
その様子が少し面白くて口元に笑いが出てきた僕を見て驚いた顔から不貞腐れた表情に顔を変えながら「……そういえば、なに?」と言うニーニャにまた話しかける。
「ほら、今日夕食の時に君の志望する兵団が何処か聞いただろ?でも、色々あって聞いてないのを思い出して」
「それを、今聞きたいの? 」
「駄目?」
「……いいけど」
「じゃあ、 」
「でも、後悔しないでね」
そう言われて咄嗟に「分かった」と返しつつ心の中で首をかしげる。
一体なにを後悔する事になると言うのか。
「私は」
そんな疑問をつゆ知らず、ニーニャは志望する兵団を答えてくれた。
「調査兵団に入りたい」
彼女がどこに入りたいと言っても、直接否定する気はない。する権利は僕にはないだろう。
そうは思うけれど素直に応援は出来ず、黙ってしまった。
ニーニャはそんな僕をしばらく見つめた後に真面目な顔で聞いてきた。
「もう後悔した? 」
「……いや、しないって約束しただろ」
聞いた事自体には後悔してないから本当のことだ。
僕の返答にニーニャは少し笑ってからもう一つ、問いかけてくる
「じゃあさ」
「もし、私が調査兵団になって初めての壁外調査に出て帰ってこなかったらマルコはどう思う? 」
「それは……」
想像したくないけど、ひどく落ち込んでしまうだろう。
悲しいとか、辛いとか、あと、
……ああ、そう言うことか。
そこで僕はやっと、彼女の“後悔”の本当の意味に気付いた。