夢追い人【進撃】

□8話
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震えそうになる声で、なんとか聞くと外野一同は不思議そうな顔をする。

「いや……そりゃあんな夜中に抜け出したら気付くだろ」

とは誰が言ったか。
マルコが私の両手を握っていたのを離し、外野にゆらりと近づいていく。

……相当怒ってるみたいだし、お説教で一夜明けるかもなぁ

「だからって覗くのはっ」
「ーーマルコ!静かにしてください!!」

「!?」

そんなマルコを物ともせず止めたのは、警戒した動物みたいな顔をしたサシャだった。
あまりに突然だったので、あれだけ怒っていたマルコも拍子抜けした顔をして咄嗟に黙る。

周りが一気にシンとした。
その中で、よく聞こえないけれど足音のようなものが。
真っ暗な向こうから、ぼんやりとした光の玉が足音と一緒にこっちに。

まずい。多分あれは

考えるより先に体が動いた。一目散に寮(もちろん女子の)に向かって駆け出す。
それは私だけじゃなく、みんなも同じだったので一斉にその場を離れていった。

あれはどう考えても見回り中の教官だ。
もし、こんな夜中に宿舎を抜け出してあろうことか男女で集まってどんちゃん騒ぎになっているところを見つかっていたら……

想像したくない。



なんとか女子寮の前まで辿り着く。教官の気配はない、と思ってる。
寮の中に入ってからサシャにお礼を言う。

「サシャ、さっきは言ってくれてありがとう」
「いえいえ!ああいうのはお互い様ですよ!」

サシャはいつもみたいに笑ってそう言ってくれた。
でも、覗くのは良くないよ。その気持ちを込めてちょっとだけ苦笑いで返した。

できるだけ音を立てずに、部屋に帰って自分の寝床に入る。
まだ外は暗かったけれどもう夜更けだ。早く寝ないと明日が辛い。

そう思いながらうとうとしていると、さっきまでのことが嘘だったみたいだ。


“月が綺麗ですね”
“僕は君のことが好きだ”

嬉しい。嬉しい、けど恥ずかしい。顔が赤くなる。
マルコの赤い顔は初めて見たな。ああやって手を握られたのも、初めてだった。

これだけ幸せだって思えたのも初めて、じゃないかもしれないけれど久しぶりだ。


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