ハルと飛ぶ《ミイラ》

□1話
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後ろからたあくんと、たあくんに抱かれながらさっきの竜も入ってくる。

「見た目ほど酷い傷は無かったから大丈夫みたいだよ。目立った所には一応絆創膏貼ってる。
ぐったりしてたのはちょっとお腹空いてただけみたい」

「ねー」と竜とたあくんの方に向きながら笑いかけるそおくん。
そおくんに話を振られたのが分かったのか、竜は「ぎゃお」と鳴き声のようなもので返事をした。

私が見つけたばかりの時は動く隙すらなかった尻尾をぶんぶんと振り回し、辺りをキョロキョロと見回す竜。本当にすっかり元気になってくれたみたいで、嬉しい。

「よかった」
小さく呟いた瞬間、竜がこっちを向いて私と目が合う。
と、思えばたあくんの腕を離れ勢いよく私に飛んできてその勢いを殺し切らないうちに胸に

「うっ」

衝突した。ほんの少しよろける。……結構痛い。

「ハルちゃん!?」
「春瀬!?」
「桃香!?」

3人の声がそれぞれに私を呼ぶ。
「だい、じょぶ……」と少し大丈夫じゃ無さげに返しつつ、胸元の竜を見ると嬉しそうに見上げる竜とまた目が合った。
「……」
そっと頭の辺りを撫でてみると、もっと嬉しそうな顔をして千切れんばかりに尻尾を振る。
どちらかというと、動物には懐いてもらえないほうだから割と、かなり、物凄く、嬉しい。
顔に出ないようにと思っていたけれど、きっと今の私はとても破顔しているだろう。

「きみ、私が好きなの?」
聞いてみれば、ぎゃおと鳴いて頷くような仕草で返す。
パタパタとうご尻尾、竜は私に顔をうずめてスリスリとしてきている。


その仕草の全てが、私の心を優しく締め付けて言い様のない感情が込み上げて来た。

「きみ、可愛いなぁ……っ」

怪我をしているので、出来るだけ力を入れずに頑張って抱きしめる。ああ可愛い。この竜、本当に愛らしい。
さっきから胸がキューンとしてる。可愛いと思うのが止められない。

「ハルちゃんメロメロだな!」
「うん……っ」
モギちゃんがいさおにメロメロなのも今この瞬間から理由が分かるようになった。
そんな、こんなに可愛い子なのだからもう息を吸うように愛でていたくなる。分かる。


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