ハルと飛ぶ《ミイラ》
□2話
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「桃香、その子飼うの?」
ふいに、私に質問を振ったそおくん。
「っ……」
ついさっきまですっかり竜に絆されていたとは思えないほど、私は体を強張らせた。
「ぇ、と……か、飼ったりとか、していいなら……
出来れば……」
無闇に身構えた私から出るのは震えを抑えきれていない声。
あまりにも違和感のある私に3人とも、特にモギちゃんなんかははっきりと怪訝そうに表情を曇らせてしまった。愛想笑いをしてみたけれど、変わらない。
抱いていた竜にも、不安とかそういう感情が伝わってしまったのか心配そうに小さく鳴くのが耳に入る。
ハッとしてそっと頭に手を滑らせ、呼吸で息を吐くほどの吐息に乗せてごめん。と小さく囁くけれど竜は心配そうな表情を私に向けるのをやめなかった。
「……春瀬と一緒に暮らすなら、食べれる物とか把握した方がいいんじゃないか?柏木」
ほんの数秒だったかもしれないし、数十秒だったかもしれない悪い空気を切ってくれたのは他月。
急に話を振られたそおくんは、少し驚いたようだったけれど「あ、あぁうん!まだ時間はあるし……探そっか!」と言ってキッチンの方へ歩いていった。
モギちゃんも「空ちゃん、手伝うぞ!」と言ってそおくんについて行ってキッチンに向かう。
モギちゃんの後ろ姿を見届け、向こうから楽しそうな2人の声が聞こえ始めた頃、ほんの少しだけたあくんのいる方を見てみると動く気はなさそうな様子、と思うと同時に目が合った。
「!」
すぐ逸らす。
……って私、ダメだ。
「……ごめん」
向こうの2人には聞こえないように、それでもたあくんには聞いてもらえるくらいでぽつりと呟く。
せっかく、そおくんが気を使ってくれたかもしれないのに台無しにした事への罪悪感。
たあくんに要らない気づかいをさせてしまった事への罪悪感。
身構えたせいで、変な空気にしてしまった事への罪悪感。
昔、酷いことを言ったことに対する未だ消えない罪悪感。
全てをひっくるめて、少しずつ混ぜたような気持ちの三文字だ。
余計な事ばかり混じってて誠意のない謝罪に感じる。
私が呟いてから少しして、はあ、と大きな溜息がたあくんから聞こえた。