夢追い人【進撃】
□7話
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「……マル……きて、ねえ」
宿舎の人間どころか草木も寝ているような夜更け。
そんな時間、すっかりと寝入っていた僕の意識を浮上させようと誰かが呼びかけてくる。
「マルコ、起きて」
「んん……」
はっきり聞き取れてくると、呼びかけている本人もどこか眠そうに聞こえる。
自分だって眠いのに何故僕を起こそうとするのか。ますます理由が分からない。
……考えるより直接聞いた方がはやいか。
そう結論を出して僕はまだ重い瞼を開いて自分に呼びかける人物を確認して話しかける。
「……こんな夜更けに一体なんなんだよ
アルミン 」
「ごめんね、こんな遅くに……」
質問に答えるより先に謝罪を入れて、一つあくびをするアルミン。声は周りを気遣ってか小さめだった。
こんな時間に起きてる人など居ないはずなのに、アルミンは周りを見てから小さめだった声をより一層静めて僕の耳元に顔を近づけて質問を答えた。
「マルコに会いたがってる人がいるんだ。
今日のこの時間、呼び出して欲しいって僕は少し前に頼まれててね」
だから、ちょっと来て欲しいんだけどいいかな?
耳元に近づけていた顔を離して、アルミンはそう聞く。
……これまさか、心霊的な類だったりしないよな。
真っ先に行き着いた考えはそこだった。そしてすぐに自分で否定する。
いや、そんなことがあるわけ無い。ありえない。第一それなら噂の一つも出ているはずだ。
じゃあ、誰がこんな時間に。
「はぁ……
いいよ。アルミン案内してくれ」
これも考えたところで埒が明かない。潔く付いて行こう。
諦めの溜息を吐いてからアルミンに了承を伝えた。
「ありがとう。
大丈夫だよ、マルコに会いたがってるのは僕もマルコもよく知ってる人だから」
安堵したような表情になって、そう言う。
僕がよく知っていてアルミンもよく知っている人物なんて同期にはごまんといるから全く絞れないじゃないか。
そうは思ったものの口には出さない。
ともかく、真相を確認する為に僕はアルミンに案内されて寮を抜け出し外へ向かった。