夢追い人【進撃】
□10話
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「よう、お前ら」
向こうから駐屯兵っぽい人が後ろに人を連れてこっちに来る。
私には身に覚えがない人だし敬礼をするべきか迷っていたけれど、その人ががこちらに目を向けると、苦笑いで「今はいいぞ」と言ってきたのでとりあえずはしない事にした。
「ハンネスさん!」
エレンが姿を駐屯兵の人を見てそう呼んで近寄る。アルミンとミカサもそれについて行く。その表情はちょっとだけ柔らかいようにに見えた。
なるほど。エレン達の知り合いなのか。
「お前ら、昨日卒業したってな
あのガキンチョ共がエラいもんだ」
「ハンネスさんこそ、呑んだくれが駐屯部隊長だもんな」
「こいつぅ」
笑いながら、ハンネスさんは指でエレンのおでこつつく 。
見る限りだと、かなり親しい間柄らしい。
言うなれば、近所にずっといるおじさんみたいな……?
そんな風に砕けた雰囲気で笑っていたハンネスさんがふと、真面目な顔をして言った。
「すまなかったな。お前の母さん、助けられなくって」
エレンがハッとした顔をする。
でも、すぐに真剣な眼差しでハンネスさんを見つめて
「ハンネスさんのせいじゃない。」
そう言った。
ハンネスさんが予想外という表情になる。
「俺たちはもう無知じゃない。
もうあんな悲しいことは起こさせない。
必ず巨人に勝つ!」
ハンネスさんにそう言い切るエレン。表情は真剣そのもの。
三年前から変わらないなぁ……
「……エレン、そろそろ行かないと固定砲の整備に遅れてしまう」
空気を読んでか読まずか、ミカサがそう言った。
エレンはその言葉を聞いてハッとした表情をして言う。
「あ、そうだった忘れてた!
俺もう行くから。じゃあな、ハンネスさん!」
「おう……」
そのまま振り向かずに駆け出して行くエレン。
アルミンとミカサはそんなエレンの後ろ姿を見ていて多分気付いていなかったと思うけれど、ハンネスさんは走って行くエレンを見つめながら、とても複雑そうな表情を浮かべていた。