story

□負けへんから
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私はほかのメンバーのこともあるから
ここではななだけにつきっきり
ってことにはいかへん訳で


お互いそういう約束というか

そこは理解の上やから......


本当は心配で心配で
仕方なかったけどグッとこらえた




きっとそれを察したのか
近くで落ち着かせとった百花が
私の隣にななをおぶって連れてきた



「今は特別やから
隣におってあげ」


マイクを離して
私にだけ聞こえるようにそう言った



百花の優しさにはいつも助けられる

いつも意味わからへんこと
ばっか言ってるくせに
こういう時はかっこいいねんなほんまに


「ありがとう百花」






そうこうしている間にも
どんどん発表は続いていった





「なな、顔上げ?」

肩で息をするほど泣いとって
さすがの私でも泣きやませられへんくらい



「大丈夫、大丈夫やから
私が隣におるから」



きっとこんな言葉耳に入らへんくらい
小室の頭ん中はパニックやって

今の自分の精一杯さと
これからの副キャプテンの責任と
兼任への不安と

そりゃあ一気にそんなに
荷物が来たらパニックになって当然やわ



何を言っても顔を上げてくれへん








「上西恵

.....卒業」




名前か呼ばれてへんのに気がついた
メンバーやファンの人たちは
薄々気づいとったかもしれへんけど

そのタイミングで
上西の卒業が発表された




一期生には話してくれとったから
ななも上西の卒業は知ってた


きっとそれもあったんかな




上西は今までずっと副キャプテンとして
私なんかよりNを引っ張ってくれた



そんな同期の卒業

それからその後を引き継ぐプレッシャー


ななは一期の中で最年少で
ずっと妹キャラやったもんな



しっかりしてんのは知ってるけど

それでもやっぱり私たちからしたら
何年経っても妹みたいな存在やった



そんなななが副キャプテンになって
しかも兼任で他のチームにも行くなんて



きっと不安でいっぱいになってるんよな









しばらくすると一旦落ち着いたみたいで
顔を上げて挨拶をはじめた





「すごくびっくりしてて.....
こんなに泣いてしまってごめんなさい

副キャプテンとして
けいちゃんがしてくれとったことを

.....私なんかにできるのか
不安しか今はないんですけど.....



少しでも彩ちゃんの負担を
少なくできるように.....


......私でもできるんやって
皆さんに思っていただけるように
.......頑張ります..



....兼任は.......
まだよく理解できてなくって......

でも.....機会をいただいたからには

兼任してよかったって
....そう思えるように

思ってもらえるように
私なりに頑張ってきます」









震えるような声やったけど


それでも力いっぱい
一生懸命に話をする姿に

ほんまに胸が苦しくなった




不安で涙が溢れそうなはずやのに
前向きな気持ちをしっかりファンの皆さんに
伝えようとしてるんよね



私が心配してるよりも
ずっと強くて
しっかりしてたんやな
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