暁のヨナ

□自分で決めた
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〜No.side〜


ヨナの頭をゆっくりとなでるイアルの表情は
どこか懐かしそうで慈愛に満ちていた


ヨナ「イア...ル?」


イアル「おや、もう呼んでくれないんですか?


    せっかくまた聞けたの思ったのに。」


先程ヨナはイアルの事を“姉上”と呼んでいたがそれはほぼ無意識だったのだろう


現に今ヨナの頭の上には?を浮かべている状態だ



そんなヨナの様子に再び笑みを浮かべていると



「イアル、諦めて連れていくことじゃな。」



ヨナ・ハク「「!!」」


ヨナとハクは第三者の声に驚いたがイアルは諦めた様にため息をつきながら声のした方を向く



イアル「そうですよね...



    ....自分が思っていた以上に頑固な子達でしたよ、ムンドク長老。」


ムンドク「フン、“ムンドク長老”なんて他人行儀な呼び方をするんじゃない。」


そこには仁王立ちするムンドクの姿が



ハク「ジジイ...何でここに....」


ムンドク「お前さんが姫様に無礼を働かんかの見張りじゃ。」


ヨナ「ムンドク...探してたのよ。...私ッ...!」


ヨナがムンドクに駆け寄るとムンドクはそっとヨナの頬に手を添えて言った


ムンドク「...孫をまた一人、手放すようじゃ。」

そう言った彼の表情は寂しそうだ


ヨナもその表情につられて泣きそうになりながら答える


ヨナ「私...皆にも言われたの、“家族だ”って。嬉しかった。



   ...だから出ていくの。




   ムンドク、どうか風の部族を守って。」


泣きそうになりながらも強くそう言ったヨナの姿を見てムンドクは納得してくれた


ムンドク「御意に。.........忘れないでください、姫様。




     何時かあなたが再び絶望に立たされ、助けを求めた時



     我ら風の部族は誰を敵に回しても御味方いたします。」



イアル「...だ、そうですよ、ヨナ姫様。」


これまで黙っていたイアルがヨナの後ろから声をかける



ヨナが振り返るとイアルは真っ直ぐヨナを見つめ






跪いた


ヨナ「!!イア」

イアル「...先程自分は申し上げました。“自分の生きたいように生きる”と。


    その言葉に偽りはありません。」


ヨナ「じゃぁ...」


ヨナは恐る恐るイアルに聞いた


イアルの表情は跪いているためヨナにその表情は見えない


だが次の瞬間、イアルは顔をあげた


ヨナ「!!!」


その表情は先程のような冷たい表情ではなく


とても優しく、嘗て_____





___まだ“立場”というものにより隔たりが生まれる前にヨナ達に見せていた表情だった


イアル「____自分は、ヨナ姫様とハクと共に参ります。




    喩えどんな困難が待ち受けようとも






    全てが敵になろうとも







    自分は、最後まであなたたちの味方で居続けます。




    これは義務でもなければ使命でもない。



    自分で決めたことです、ヨナ姫。」



イアルのその言葉にヨナの瞳には涙を浮かべ、静かに頬を伝った
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