長編小説 Meer
□Meer5話 始動
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〜2015年2月1日 ソウル郊外〜
「最近、おまえと任務多くね??」
スニョンは、グレーのパーカーのフードに顔を埋めながら言った。
「仕方ないでしょ。暇なのが僕らだけだったんだから。」
ジュンは、携帯に送られてきた住所を見ながらこたえた。
「まぁ、そうだけどさー…」
ジフナとハニヒョンは、室内での任務。ウォヌは、例の3人の見張り。スンチョリヒョンは、この任務に向かないからだめ、と言われて、家で大人しくしていた。
「ねえ、ジスヒョンは?」
「あの人も暇なんじゃない?人当たりいいし、ジスヒョンのほうが今回の任務に向いていると思うけどなぁ...」
スニョンがぼやくのを横目で見ながら、ジュンはため息をついた。
「ジスヒョンがでるほどのことじゃないってことでしょ。」
俺らで十分、てことだよ。ジュンがつぶやくと、なるほどなぁ、と納得したようにスニョンは言った。
「たぶんここ。」
安そうなアパートの前でジュンは停止した。
「え?こんな小さなところに6人で住んでんの?」
スニョンは、これはたまげたと言うように方眉を上げた。
そんなスニョンを無視して、ジュンは錆びた階段を登り、二階の奥へと進む。
【205】と書かれた部屋の前で立ち止まると、ジーパンのポケットに入れていた細い針金を取り出した。
「おまえなら、すぐ開けられそうな鍵だな」
スニョンがつぶやくのとほぼ同時に、カチャリ、と音が鳴った。
手袋をしたままの手で、ジュンがそっとドアノブを回した。
〜2015年2月2日 AM1:00〜
「こんばんわ」
ウォヌは裏路地で、ターゲットを探していた3人の前に姿を現した。
この時間帯に裏路地をうろついている人が、いきなり挨拶するなんておかしい。
直感的にそう感じたミンギュは、一歩後ずさりをした。
「こんばんわ。
・・・お兄さん、こんな夜中に何してるの?」
そう答えるミンハオを見て、ミンギュは何をしてるんだ、と目で訴えた。
黙ってて。ミンハオの目はそう語っていた。
「君たちに話があってね。」
ウォヌは、写真を撮りだした。
「君たちが何をしているのか、知ってしまったんだよね」
ミンギュとミンハオとソクミンは、ハッと息をのんだ。
写真には、遺体を袋に詰めるミンハオ、それを担いで夜道を歩くミンギュ、部屋で解体を行うソクミンの姿が映っていた。
「どうしてっ…!」
ソクミンは悔しそうに顔をゆがめた。
「…まって。何で家の中.....」
家には、かわいい弟達が眠っているはずだ。ミンギュは顔を青ざめさせた。
その姿を見て、ウォヌがフッと笑った。
ウォヌの余裕そうな笑みを見て、ミンギュは拳をわなわなと震わせた。
ウォヌは、今にも自分に殴りかかってきそうなミンギュを見て、笑みを浮かべたまま腰に差してあったナイフに手をかけた。
「いいこと教えてあげようか。俺はひとりじゃない。仲間がいる。さあ、今どこにいると思う?」
ソクミンは、目の前の男を睨んだ。
「まさか…」
「ピンポーン。大正解。イソクミン。君が考えたとおりだよ。」
〜2015年2月2日〜
「もう日付が変わったのか...」
ジョシュアことホンジスは、深夜のミサを終えたあとも教会の中でひとり物思いにふけていた。
胸ポケットにしまってあった懐中時計で時間を確認すると、背もたれに掛けていたコートを羽織り、のんびりと教会をあとにした。
(さて、弟達はうまくやっているのかな?)
任務をちゃんとやってるか見に行こう。
そう思うやいなや、ジスは夜のソウルへと姿を消した。