長編小説 Meer

□Meer6話 対面
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〜2015年2月2日〜




「おい、少し横になっとけよ」



スンチョルの声にジフンは振り返った。

目線の先には、少し青い顔をしたジョンハンがソファーに身を沈めていた。





「大丈夫だから」




ジョンハンは、少し不機嫌そうにスンチョルを睨んだ。





現在、午前0時過ぎ。スニョンとジュン、ウォヌはそれぞれの任務に向かったばかりだった。ここ最近、片付けなければならないことが多くて、あまり眠れなかったのだろう。



「ジョンハニヒョン。今任務に行ったばかりだから、まだ帰ってくるまで時間ありますよ」




新しいメンバーが来る。そんなときに寝ていたくないのだろう、ジョンハンの考えは分かっていた。しかし、こんな蒼白い顔で出迎えられてもな。



ジフンは、よいしょと椅子から立ち上がると、ジョンハンの手をひいた。






「僕、寝不足で眠たいんです。みんなが帰ってくるまで、一緒に仮眠とりませんか?ひとりで寝るのは気が引けて…」









ジョンハンはジフンを見て小さく笑った。

「いいよ。一緒に寝よっか。」



ジョンハンはジフンの嘘に気づいている、そんなことはジフンも分かっていた。
ジョンハンは、ジフンに甘いところがあった。ジフンはそれを十分理解していた。




「じゃあ、スンチョリヒョン、みんなが帰ってきたら起こしてください」






ジフンは、スンチョルにそう言い残して部屋を去った。







〜2015年2月2日〜


薄い壁の向こう側から2人の男の話し声が聞こえた。


(ヒョン達じゃないな・・・)


こんな夜中に誰だろう。ハンソルは、耳を澄ました。

すると、カチャカチャと金属が触れあう音が聞こえてきた。




(まさか、うち…?)



ハンソルはおそるおそる玄関のほうを見た。








(絶対うちだ...!!)

そう確信したハンソルは、慌ててスングァンとチャンを起こす。

いきなり起こされて、文句を言いそうな二人の口を押さえ、顎で玄関の方をさす。







「どうしよう。。。」

スングァンは、あわあわと焦りだした。



泥棒か?それとも、ヒョン達に夜の仕事を持ってくるあの人たちか?








ハンソルは、近くにおいてあったバットを持つと身構えた。


「チャン、後ろに下がっときな」


ハンソルがチャンにささやいたのと同時に、ガチャリという音が響き、玄関が開く音がした。











「なんだ。起きてたんだ。」

玄関から顔をのぞかせた、金髪の男がはじめまして、と笑った。





「誰だ、おまえ」


ハンソルは、バットを構えて金髪の男を睨んだ。






(どうすればいい...?)




―― 大きな音を立てて、近所の人に気づいてもらおうか。そう思い、ハンソルはバットで窓硝子をたたき割ろうとした。




すると、金髪の男の後ろから顔を出した長身のきれいな顔をした男が顔を出した。



「そんなことしたら、この部屋に警察はいるよ。いいの?」








その涼しそうな顔に、ハンソルはギリッと奥歯を噛んだ。









「ハンソラ、だめだよ。ヒョン達のことばれちゃう」

スングァンは泣きそうな顔をして、小声で訴えた。








「もーさ、どうしたらいいか分かるんじゃない?」




金髪の男は、面白そうに笑って首をかしげた。




ハンソルにはもうどうすることもできなかった。



静かにバットを置くと、手を挙げた。











〜2015年2月2日〜





ウォヌはいまだに拳を握りしめているミンギュと、立ち尽くしているミンハオの肩に手を置くと、ソクミンの顔をのぞき込んだ。





「君は頭がいい。この状況で、何が一番最善か、もう分かってるだろう?」




何が最善か。ソクミンだけでなく、ミンギュもミンハオも分かっていた。












「…・・何をすればいいですか...」



何の抵抗もできない自分が悔しかった。今、男に肩に手をかけられている二人もそうであろう。しかし、弟達を思うとそうするしかなかった。






ソクミンが、そう言葉を放ったあと、パチパチパチ…と背後から拍手が聞こえた。


慌てて振り返るとそこには、黒のタートルネックに黒のロングコートを羽織った、猫のような目をした男が、笑みを浮かべて立っていた。






「さすがウォヌ。心配で見に来たけど、僕の助けなんていらなかったね」


そう言うと男は、くるりと向きを変えて歩き出した。


「ちょっとヒョン!せっかく来たなら、一緒にこいつら連れて行くの手伝ってくださいよ」



ウォヌの声に立ち止まると、顔だけをこっちに向けた。



「最後まで任務ができてこそ、一人前だよ、ウォヌくん。」


ウォヌは、まったく、とため息をついた。




再び歩き出そうとした男は、思い出したように立ち止まって、ソクミン達の前に立った。










「自己紹介まだだったね。僕は、ホンジス。よろしくね。」



月明かりに照らされたジスは、本物の猫のようだった。
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