長編小説 Meer
□Meer7話 新たな出会い
1ページ/1ページ
〜2105年2月2日〜
ミンハオは、珍しく焦っていた。
自分たちに選択肢はなかったものの、見知らぬ男についてきてしまった。
男は、ミンハオ達を黒いバンに乗せると、一昔前に流行ったジャズを流しながら車を発車させた。
男は、ミンハオたちを拘束することはしなかった。
でも、逃げることはしなかった。いや、できなかった。弟達のため。そう思ったら、従うしかなかった。
――――… あの日、黒いスーツを身にまとった男から与えられた仕事は、殺しと解体だった。下の弟達は少し離れて後ろに下がっており、仕事内容は聞こえていないようであった。
そんな恐ろしいことをできるわけがない。人を殺すなんて。
そう思っていた。そのとき、視界に入ったのは、寒そうに身を寄せ合う弟達。そして、ミンハオの人生の大部分をともに過ごしてきたミンギュとソクミンだった。
今、ここで仕事を引き受ければ殺されるかもしれない。
生かされたとしても、この先、自力で生きていくことはできないかもしれない。
こう考えたのは、ミンハオだけではなかった。
隣に立っていたミンギュが、札束を受け取った。
「交渉成立だな。」
男がつぶやいたのを見て、ミンハオはもう逃げられない。そう思った。……――――
そんな昔のことを思い出しながら、ミンハオは窓を流れる景色をぼんやりと見ていた。
(これからどうなるんだろう…)
これから先、どうなるか全く見当がつかなかった。
〜2015年2月2日〜
スングァンは、男達に連れてこられた建物を見上げた。
(普通の家みたい…)
もっと、こう、山奥の研究所みたいなところ、とか、コンクリートのビルのようなところだと思っていた。
今、スングァン達が立っているのは、普通の住宅街だった。
「大きな家…。」
隣にいたチャンが、ぽつりとつぶやいた。
目の前の建物は、3階建てのきれいな家だった。
庭には、車が2台駐まっており、家の敷地は、高めの塀で囲まれていた。
「さあ、入って。」
金髪の男が、立ち尽くしているスングァン立ちを促した。
今から何をされるのか。不安で押しつぶされそうになりながら、3人は玄関をまたいだ。
「いらっしゃい。」
もしかしたら、中に入ったら殺されるかもしれない。
そんな心配をよそに、家の中に入ると、スングァン達を迎えたのは、柔らかい声だった。