長編小説 Meer
□Meer8話 新生活
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〜2015年2月2日 pm4:00〜
ミンギュは、柔らかい柔軟剤の香りのするベッドで目を覚ました。
カーテンの間から差し込む夕日を眺めながら、昨夜から明朝にかけてのことを思い出していた。
―――・・・ 殺されるのか、売られるのか、弟達は守れるのか。。。
そう考えているミンギュ達が連れてこられたのは、一件の大きな家だった。
拍子抜けするくらい普通の。
唖然としているミンギュ達の背中を、ウォヌと名乗った男が押した。
「ヒョン!!!」
家の中に入ると、待っていたのはスングァンとハンソル、チャンだった。
「なんでっ…・?!」
なんで、ここに弟達がいるのか。
自分たちが大人しくついてくれば、弟達は無事だったんじゃないのか?!
ミンギュは自分の背を押したウォヌを睨んだ。
「そんな睨むなって。悪いことはしてないから。」
そんなこと信じられるか!という言葉をぐっと飲み込むと、駆け寄ってきた弟達に向かい合った。
「よかった!ちゃんとヒョン達、来てくれた!」
そう言い、抱きついてきたハンソルは笑っていた。
この状況、分かってるのか?こいつは。。
そう思い、ミンギュが口を開こうとしたときだった。
「お疲れ様!ミンギュ君、」
…ん?この声聞いたことある。。。。。
声のした方に目をやると、金髪に派手なTシャツ姿でこっちを見ている男がいた。
「.....スニョン先輩??!」
そこにいたのは、ミンギュのアルバイト先の先輩だった。 ・・・・―――
「世の中って狭いよな...」
ミンギュがつぶやくと、隣で寝ていたミンハオがゴソゴソと動いた。
「そんなこと言ってる場合?」
ミンハオはミンギュを鼻で笑った。
そんなミンハオを見て、ミンギュもフッと笑った。
「おまえだって、今までぐっすり寝てただろ。」
ミンハオは、まぁね、と気の抜けた返事をするとムクリと起き上がった。
「でもさ、なんでここに連れてこられたんだろうね。俺ら。」
〜2015年2月2日〜
ソクミンは、隣ですやすやと眠っているチャンの寝顔をみていた。
(まだ、中学生なんだよな…)
比較的年齢の割にしっかりとしているチャンが、中学生だということを忘れてしまいそうになるときがあった。
孤児院を飛び出してから今まで、生きていくことに必死だった。
家にいることは、ほとんどなかった。
こうして、チャンの寝顔を見たのもいつぶりだろう。
昨夜連れてこられたソクミン達は、何をされるわけでもなく、この部屋使って、とベッドが置いてあるきれいな部屋に通された。部屋には鍵もついておらず、逃げだそうと思えば逃げ出せそうだった。
(あの人達は何がしたいんだ?)
ソクミンは不思議だった。
「これ。何が好きか分からないから適当に買ってきた。好きなもの食べて。」
部屋に顔をのぞかせたのは、裏路地で会ったホンジスという男だった。
「詳しいことは、明日話すから、とりあえず食事でもして、ゆっくり寝な。」
ソクミンが疑問をぶつけるまもなく、ホンジスは去って行った。
「ヒョン、これ食べようよ。」
育ち盛りのチャンは、袋の中に入っていたアメリカンドッグを手に取った。
(アメリカンドッグ、、、、、チャンは始めて食べるんだっけ?)
切り詰めた生活をしていた中で、食べられるものは限られていた。
おいしい、おいしい、と頬張るチャンをみて、ソクミンは切なくなった。
それと同時に、うれしかった。