長編小説 Meer
□Meer1話 それぞれの日常
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2015年1月24日 ソウル郊外
「おかえり」
深夜2時。ソクミンは黒を濡らして帰宅した二人に声をかける。
「これ。」
二人のうち体格のいい方の男が黒のビニール袋を差し出した。
ソクミンは、それを無言で受け取る。
「何。今日のは軽いんだね。」
いつもは片手では到底持てない重さの袋が、今日は片手でも持てるくらいに軽い。
「今日は子どもだから。」
濡れた明るい茶髪をタオルで拭きながら、細身の男がこたえた。
「そう…」
ソクミンは自分が受け取った黒い袋を見ながら、今から行うことを想像する。
このようなことを始めて、1年が経とうとしているが、未だに慣れない。いや、慣れてはいけないだろう。しかし、これを当たり前のようにしている自分に、小さくため息をつく。
「腐らないうちにやれよ。」
血まみれになったシャツを脱ぎながら、体格のほうの男、ミンギュはソクミンに声をかけた。ソクミンが小さくうなずくのを確認すると、
mk「ミンハオも早く着替えろよ。」
いまだに血で染まったシャツを着ているミンハオを急かすように言うと、ミンギュは風呂場に向かった。
mh「じゃあ、あとよろしくね。」
ミンハオは、シャツに手をかけながら、たたずんでいるソクミンに声をかけた。
sm「了解」
ソクミンは、黒い袋を持ち直すと、部屋の一番奥にある鍵のかかった部屋に入っていった。
2015年1月27日 ソウル中心部
「なぁ、聞いたか?」
「何を?」
派手な金髪にカラフルなパーカーを羽織った男が、飴棒を咥えながら隣の別の男に問うた。
シンプルなコートに身をまとった背の高い男は、長い指でモバイルゲームをしながら興味なさげに聞き返した。
「この間、行方不明になってた小学生の女の子の臓器が闇市で売られてたって。」
派手な男は、できあがったばかりのカップラーメンをかき混ぜながら声を潜めた。
「…ふーん。。」
話に少し興味が出たのか、ゲームを終了させると男は、携帯から顔を上げた。
派手な男は、その態度に気をよくしたのか、口に残っていた飴を奥歯でガリッとかみ砕くと、口角を少し上げた。
「……で、いまヒョン達が調査してるって。」
カップラーメンが空になる頃、すべてを話したスニョンは最後にそう付け加えた。
「なんだ。もう、調査してるのかよ」
ウォヌは、せっかく新しいネタを手に入れられたと思ったのに、とぼやきながらスープを飲み干した。
sn「俺たちが、ヒョン達より先に情報見つけられるわけないじゃん。」
スニョンは空になったカップラーメンの容器をつぶすと、ゴミ箱に放り投げた。
ゴトン、と音を立ててゴミ箱に入った容器を見つめながらウォヌは立ち上がった。
wn「だな。」
二人は、凍るような寒さの中、肩を並べて歩き出した。
2015年1月26日 ソウル中心部
「たぶん、あいつらで間違えないと思います。」
ジフンは、資料として印刷してある数枚の写真を見比べながら言った。
ソウルの住宅街の地下、オンドルで暖まった部屋で、ジフンはスンチョルとジョシュアはジフンが収集した情報に耳を傾けていた。
js「うん。間違えないと思う。」
お疲れ様、と柔らかい笑みを浮かべながらジョシュアは徹夜開けのジフンを労った。
wz「でも、ヒョン。これ調べてなんになるんですか?今回の件、依頼じゃないですよね?」
ジフンが調査しながら疑問に思っていたことだ。
そもそも、調査だけなのだ。普段なら、このような依頼はない。
sc「ジョンハンが。これからのMeerに必要だから、って。」
スンチョルはここにはいない人物の名前を出すと、ジフンに向かい合った。
sc「新しいメンバーが必要なんだってさ。」
スンチョルが丸めた資料には、6人の顔写真が写っていた。