短編

□Happy Day!!
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「トリックオアトリート」



「…え」



私がそう言うと、狛枝くんはゆっくり首をかしげた。
今日は普通の平日だ。
狛枝くんの誕生日は…4月だし。




「えっと、狛枝くん。何て言ったの?」




「…あはっあはは、ごめんなんでもないよ。おこがましいよねボクなんかが君のような人にお菓子をねだ」




「あ、ハロウィンかぁ!」




狛枝くんのネガティブ言葉の中から、それに関するキーワードがポツポツと脳内で繋がっていく。
お菓子なら今日ポケットに入っていたはずだ。
慌ててポケットに手を突っ込む。
だけど。




「あ、あれ?」




ポケットに入っていたはずの飴が、ない。




「ごめん、今日お菓子持ってないみたい…」




苦笑すると狛枝くんは残念がるどころか、むしろ素晴らしい笑顔に…。
ガッカリしすぎて頭がおかしくなってしまったのだろうか。
頭を撫でようと彼に手を伸ばした、そのとき。




「ねぇ、さっきボクがいった言葉の意味、わかる?」




「…私、英語の成績2なんだ」




手をぐいっと引っ張られ、綺麗に狛枝くんの胸の中におさまる。
普段男子といるときはひょろひょろのモヤシに見えるけど…こうしてみると案外しっかりした体つきだ。
その事実に少しだけ赤面しながらうつむく。




「あれ、分からないんだ」




「知ってたくせに」




「トリックオアトリートは、お菓子くれなきゃいたずらするぞって意味」




ね、お菓子持ってないんだよね。
そう耳元で囁かれ、もう一度ポケットを確認する。
そして、項垂れる。




「持っておりません」




「そ、なら悪戯しちゃうね?」




そう言った次の瞬間、私の唇は彼の唇と重なっていた。
…ハロウィン。
悪くないかもしれない。















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