ボクの亡骸

□切り取った景色
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目が覚めると、見慣れない天井が眼球に飛び込んでくる。
起き上がろうと腕に力を込めるけれど、なかなか起き上がれない。



「おはよう、さよ。久し振りだね」




「おとう、さん?」



お父さんがここにいる、ということは。
よくよく自分の体を見ると、思わず悲鳴を上げたくなるほど大量の点滴やコードがくっついていた。
抵抗しようとするが、薬を盛られたのか、力が入らない上頭まで働かない。
お父さんがここにいる。
それは私が実験体になることを表していた。



「な、んで……」



そう言うと、お父さんは私を嘲るように鼻で笑い、何も言わずに装置と向かい合った。
どうやら話しを聞く気は一切無いらしい。
頭に被せられた謎の装置が稼働し始める。
次の瞬間、脳ミソが搾り取られるかのような激痛に短い悲鳴を漏らし、それっきりなにも分からなくなった。

































カラフルな観覧車。
貼り付けたような青空と入道雲。
デパートの屋上の懐かしい景色。
大きな人たちの中に取り残され、私は一人、泣いていた。
お母さんを探していた。
これは夢だろうか?
いや、たぶん違う。
だって、こんなに鮮明で、懐かしい。


「いる?」


目の前にズイッとつき出された白い紐と白い手。
涙でグシャグシャになった顔をあげると、白髪の少年が真っ赤な風船を手に私の顔を覗き込んでいた。
同い年くらいだろうか。


「ありがとう」


ぱぁ、と顔を輝かせると、心配そうな彼の顔は一瞬にして綻んだ。
子犬のような真ん丸の目が私を見つめる。


「あ、わらった」



いつの記憶だろう。
確かにこんなことがあった気がする。
でも、誰だったっけ。
名前何て言っていたっけ。
あぁ、そう言えばあの人によく似ている。



「狛枝、くん」






















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