毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□卒業試験
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ちゅんちゅん
「……ん、……」
カーテンの隙間から漏れる光がナルトを照らす。その眩しさに薄く目を開ける。二度寝しようか…とも思ったが、今日は大事な卒業試験。寝坊だけは避けたい(毎回寝坊で遅刻している)。仕方なく起き上がりカーテンを開く。朝日がナルトを目一杯照らす。ナルトの紅い髪が光に照らされキラキラと輝く。瞳は光の加減でいつもよりも深く、余計に藍色にも見える。「ふぁぁ…」とあくびをしながら着替えようと引き出しを開ける。
「……、……あれ…?」
だが、いつもの黒いパーカーが無い。
「……あ」
そういえば昨日洗濯機に放り込んでそのまま寝たのを思い出した。あれで確か予備は最後だったはず。後は確か干してしまっていた。
「……はぁ…」
仕方なくナルトはもう一段下の引き出しを開けて白いパーカーを取り出す。白は汚れが目立つのであまり着たくなかったのだが仕方ない。
「…下も白だと可笑しいか。でも黒なんかあったっけ…」
そう呟きながら引き出しの中を探す。
「……、」
ナルトは手にしたものをジッと見つめて思案する。ナルトが手に持っているのは黒のスカート。丈は動きやすさを重視して短めだ。だからといってそんなに短い訳ではなく、膝の少し上だ。生まれてこのかた女らしい服装なんかしてこなかったし、しようとも思わなかった。三代目からもらったものの、着る気になれず、そのまましまっていたもの。だがそう長く悩んでいる暇はない。早くしないと試験に遅れてしまう。悩んだ末に、ナルトは仕方なくスカートを履いた。ハイソックスでなるべく露出を控えた。
台所で簡単なものを作って朝食を済ませ、最後に紫の組紐で長い髪を首元で緩く結わえ、フードを深く被る。そのまま靴を履いて家を出る。鍵を閉めたのを確認してアカデミーまで駆けた。

アカデミーの廊下でフードを取る。そのまま教室まで歩く。慣れないスカートなので違和感はあったが、然程気にはならなかった。
カラカラ
ナルトが教室に入ると室内は一瞬静かになるも、また騒ぎ始める。ナルトの陰口も聞こえてきたがもう慣れた事なので無視する。
「ナルトー!おは……よ…」
キバの言葉が途切れる。
「…?……あぁ、これ?服がなかったから仕方なく着てきた。…キバ?邪魔だから退いてくれる?」
ナルトは服装の説明をしてナチュラルに毒を吐く。
「あ、あぁ…わ、ワリィ…」
「どもるのって聞いててウザいからスラスラ喋って」
ナルトは容赦なくキバに毒を吐いてシカマルに話し掛ける。
「シカマル、私も窓側に座りたいんだけど。変わってくれる?ダメなら良いけど」
「いーぜ。別に偶々此処に座ったからな」
「ホント?気を遣わなくても良いよ?」
「いや、別に遣ってねぇよ」
「そう?なら遠慮なく」
そう言ってシカマルと交代する。
「代わりに隣良いか?」
「ん」
「俺もナルトの隣が「キバは五月蝿いからヤダ」…」
ナルトの言葉に撃沈するキバを無視してナルトは外を見遣る。
「…雨が降りそう…」
「雨?こんな晴れてんのにか?」
ナルトの呟きにシカマルが問う。
「小雨だけどね」
「ふーん…なんで分かるんだ?」
続けて問う。
「んー…勘というか…なんか、空が泣きそう…」
そう呟くナルトの顔は無表情だ。
「ふーん…。ま、ナルトがそう言うんならそうなんだろうな。傘持ってきてねぇから走るか…」
「いや、すぐ止むから大丈夫じゃない?」
ナルトがそう言って目線をシカマルに向けた。シカマルはポカン、としていたがじゃあ安心だなと言って机に突っ伏した。それを見てナルトはまた窓の外に目線を戻す。なのでシカマルが顔を赤く染めていた事に気付かなかった。
カラカラ
「これからアカデミー卒業試験を開始する。分身の術と変化の術が出来たら合格だ。では名前を呼ばれた者は一人ずつ隣の教室に来るように」
イルカはそう言って出て行く。数分後、スピーカーから一人ずつ名前が呼ばれる。
《渦巻ナルト!》
ナルトは名前を呼ばれたので席を立つ。
カラカラ
隣の教室では椅子が黒板側に教師達が並んで座っており、机には真新しい額当てが並んでいた。
「(…別に忍者に興味は無いんだけどなぁ)」
ナルトは内心そう思いながら無表情に印を結ぶ。
「…分身の術」
ボボボン!
「変化」
ボファァ!!
ナルトは三体の分身を出し、分身と自分はイルカに変化した。
「…合格‼よくやったなぁナルト!!よし、今日は卒業祝いに一楽に連れてってやる!!」
「ワーアリガトウゴザイマス。ワタシスゴクウレシイナー(棒)」
「七時に一楽に集合な!遅れるなよ」
ナルトの明らかな棒読みも気にせず笑ってナルトの頭を撫でるイルカ。他人との接触を嫌うナルトだが、何故かイルカには触れられても大丈夫、むしろ温かいと感じた。組紐を解いて手首に巻きつける。イルカに渡された額当てをパーカーのポケットに入れてついでに手もそのまま突っ込んで教室の扉まで歩く。
カラカラ
教室の先程座っていた窓側にはシカマルが座っていた。
「シカマル」
「お、どうだった?」
「楽勝だった。後何故か強制的に一楽に行かせらることになった」
ナルトは無表情に言う。
「まぁ、卒業祝いじゃね?」
「そんな事言ってた気がする」
ナルトは興味無い事は記憶から削除しているので、興味のない事はすぐ忘れる。記憶力は良いのだが、それが興味のある事にしか発揮されない事が惜しかった。
「この試験に落ちる奴なんているのかな」
「いねぇだろ」
「居たら思いっきり笑って自慢してやるのに…」
「まず俺はお前の笑い顔が想像出来ねぇんだが」
「失礼な。私だって出来る。ほら」
ナルトは口端を吊り上げる。確かに笑っていると言えなくもないが…これでは
「作り笑いじゃねぇか」
「……うーん…まず“笑う”ってなんなんだろう…」
「“楽しい”とか“嬉しい”とかそういうのを考えてみれば?」
「“楽しい”…“嬉しい”……、…………無理だ。やっぱり感情って分からない。皆どうやって顔に出してるんだろう」
「感情は表情を作るからな…。いずれ分かるようになるんじゃねぇの?」
「…いつもそれなんだから。シカマルは」
そう言って机に突っ伏するナルト。長く紅い髪が机に広がる。ナルトの紅い髪は血を想像させる程鮮やかだ。でも不思議と目を惹く綺麗な髪だった。シカマルは机に突っ伏するナルトをしばらく眺め、やがてわしゃわしゃとかき混ぜるように撫でた。
「……ッ…、ちょ、髪が乱れるッ…」
「元々髪なんかとかしてねぇだろ」
「……もう……」
ナルトは早々に抵抗を諦め、シカマルの好きなようにさせる。心を許した者だからこそナルトに触れられる。言わば特権だ。シカマルは上機嫌にナルトの髪を撫でた。
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