毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□中忍試験本戦!!〜自由を願う籠の鳥と、自由を願った籠の鳥〜
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「…よし」
最後に姿見で身なりを整えたナルトは、玄関へ向かう。
いつも本気を出す時などに羽織る紺色の上着は二次試験の際にボロボロになり、残念ながら着られる状態ではなくなってしまったので、新しく新調した。
半袖の白いシャツに、膝下辺りでキュッとした渋い抹茶色のズボン、その上に黒い袖なしに立襟の、脛辺りまで丈のある羽織り(フード付き)を着ている。首に掛けていた額当てもすっかりボロボロになってしまったので、火影が特別に木の葉マークが小さめに彫られた腕輪状にデザインを変えてくれた。
前よりも結構動きやすく、見た目もシンプルなので今回の服装を結構ナルトは気に入っていた。
靴を履いて家を出ると、鍵の閉め忘れがないか確認したナルトは、上着のポケットに手を入れ、試験会場へ向かってのんびりと歩き始めた。

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「…ヒナタ?」
近道しようと第三演習場を通った時、横一列に並ぶ内の一本の丸太の影に隠れる少女…ヒナタを見つけたナルトは首を傾げる。
「あ!な、ナルトちゃん…」
「おはよ。随分早くからの修行だね」
「あ、ち、ちがうの。キバくんと此処で待ち合わせしてて…」
「キバと?」
「あ!ち、ちがうよ!?ほ、ほら、私病み上がりだから!本戦を見に行くのに1人はダメだって言われて、それでキバくんが付いてきてくれるだけで…!他意があるわけじゃ…!!」
「?他意?」
「あ、う、ううん!なんでもないの!気にしないで!」
「???」
ヒナタの意味不明な言葉に尚更首を傾げるナルトだったが、話を逸らされたので深くは追求しないでおいた。
「な、ナルトちゃん、いつもよりなんか…オシャレだね」
「…そう?着ようと思ってた服が二次試験でダメになったから、新しく新調したんだけど…変?」
「ううん!とっても似合ってる」
「…そ?良かった。ヒナタも、私服姿初めて見たけど、似合ってるじゃん」
ファッションセンスあるね、というナルトの言葉に、ヒナタは顔を真っ赤にする。
「え、ひ、ヒナタ!?すっごい顔赤いけど…」
「あ、だ、大丈夫だから!!///」
「そ、そう…?」
「うん…///」
『……』
暫しの間沈黙が流れる。やがて、本戦に出場するナルトはそろそろ行かないとな、と空を仰ぎながら内心で呟いた。
「…じゃあ時間もあれだし、そろそろ行くね」
未だに顔を真っ赤に染め上げてフリーズしているヒナタにそう告げると、ナルトは歩みを再開させる。
ヒナタと数歩ほど距離が開いた頃だった。
「ナルトちゃん!」
ヒナタにしては結構大きな声で名を呼ばれたナルトは、少し目を丸くして振り返る。そこには、丸太に隠れながら俯き加減に、けれど何かに必至なヒナタが居た。
「えと、その…ほ、本戦、頑張って…ね…」
語尾になるにつれて声が小さくなってしまったけれど、ハッキリと応援の言葉が聞こえたナルトはぱちくり、と瞬きをした。
「…ヒナタさ…予選の時、“私に近付きたい”、“私のように真っ直ぐ自分を貫き通す”って言ってくれたんだってね」
「え、と…それは…///」
ゆったりと歩みを進めながら言葉を紡ぐナルトに、ヒナタはほんのりと顔を赤らめる。
「私さ…ハッキリ言うと、嬉しかった」
「…え?」
「そんなこと言われたの初めてで、すごい嬉しかった。私なんかでも誰かの憧れになれるんだなって…嘘だったとしても嬉しかったんだ」
「……」
「正直、ヒナタって自己主張薄いし、いっつもおどおどしてるし、すごい鈍臭くて、ハッキリ言って嫌いだった」
「ゔぅ…;」
「けど」
「へ?」
「今はヒナタの事、結構好きだな、私」
「……」
「あ、そろそろ行かないと本格的にヤバイな…。じゃあまたね、ヒナタ」
硬直しているヒナタに気付かず、ナルトはヒナタに片手を上げて別れを告げた後、小走りで会場へ向かった。
「…よ!お待たせヒナタ〜…って、ヒナタ?」
ポカン、としたまま明後日の方向を見つめるヒナタに、キバはおーい?と意識を戻させようとする。
やがて。
「…〜〜ッ!!///」ボンッ!
「!?ヒナタ!?ヒナタ〜!?;」
正気になった途端、勢いよく顔を真っ赤に染め上げて倒れたヒナタに、キバは激しく狼狽しながら介抱する羽目になった。

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大勢の観客の騒々しさに、ナルトは若干顔を顰めながらシカマルの隣に立っていた。
「…ねぇシカマル。うちは知らない?」
「あ?そういや居ねぇな…」
そう言って辺りを見渡すナルト達を、試験管兼審判を任された特別上忍こと不知火ゲンマが小声で咎めた。
「おーらそこのお前ら、おろおろしてんじゃねぇ。しゃんと胸張って、客に顔見せしとけ。
この本戦……お前らが主役だ」
ナルトは、大勢の観客で埋まっている観客席を見渡す。
「(…嫌な予感がする…。なにか、大切なモノを喪う…そんな気が)」
ざわりとざわめく胸を服の上から押さえつけ、不穏な思考を無理矢理頭の隅に追いやると、ナルトはゲンマの話に耳を傾けた。

「サスケは、まだ見つからないのか」
「暗部数名のチームで探し回っているのですが、全く…」
三代目の問いに、側に控えていた中忍が力なく答える。
「もしかすると、既に大蛇丸の手に…。そうなると、もう見つけることは…」
「…分かった」
中忍の言葉に、三代目は静かに了承を告げると、足音のする方へ意識を向けた。
「おぉ!これはこれは…風影殿!」
風影は無言で三代目の隣に配置された椅子へ腰を下ろす。
「遠路はるばる、お疲れじゃろう」
「いえ、会場木の葉で良かった。まだお若いとは言え、他所へわざわざ赴くとなると、火影様にはちとキツい道のりでしょう。早く五代目をお決めになった方が良いのでは?」
どこか不気味な雰囲気を醸し出しながらそう告げる風影に、中忍は密かに顔を顰める。だが言われた本人は気分を悪くするでもなく、苦笑混じりに笑った。
「ほっほっほ。まぁ、そう年寄り扱いせんでくれ。まだ5年はやろうと思っておるのに」
三代目はそう言いながら立ち上がると、全ての位置から丁度姿が見えるよう柵の前に立ち、
「……では、そろそろ始めますかの」
と言って、会場全体へ声を響かせた。
「えぇ、皆様。この度は木の葉隠れ中忍選抜試験にお集まりいただき誠に、ありがとうございます。これより、予選を通過した8名の本戦試合を始めたいと思います。どうぞ、最後までご覧下さい」
三代目がそう言い終えると、観客席から歓声のようなものが上がる。その煩さに、ナルトは密かに眉を顰めた。
「本戦前に言っておくことがある」
ゲンマ上忍はそう言ってベストの内ポケットからトーナメント表を取り出し、私達へ見せた。
「これを見ろ」
『……?』
自分達の記憶とは少し違うトーナメント表に、ナルト達全員が首を傾げる。
「少々、トーナメントの変更があった。自分が誰と当たるか確認しとけ」
「…俺、他の奴より予選の数多かったのに…ドスって奴、棄権したのか?」
隣でボソッとそう呟くシカマルに、ナルトはかもね、と小さく答えて、疑問を問うために軽く手を挙げた。
「あの、うちはがまだ来てないんだけど、どうなるの?」
「…試合時刻までに来なかった奴は、不戦敗とする」
「…そう(何やってんだアイツ…)」
ゲンマの答えにナルトは内心でそう呟く。恐らくカカシと共に修行しているのだろうが、幾ら強くなっても試合に出れないのなら意味が無い。
まぁ、幸運なことにサスケの試合は最後なので、それまでに来る事を祈る他ないだろう。
「良いかテメェら。地形は違うが、予選と同じで“ルールは一切無し”ってのがルールだ。
勝負はどちらか一方が“死ぬ”か“負けと認めるまで”だ」
ゲンマ上忍の説明に全員の目付きが鋭くなる。
「ただし、俺が決着が着いたと思ったらそこで試合を止める。反論は許さない…分かったな。
それじゃあ一回戦…渦巻ナルト、日向ネジ。
その2人だけを残し、他は控室まで下がれ」
ゲンマの言葉に従い、ナルトとネジ以外が控室へと繋がる通路へ歩いていく。
「…頑張れよ」
「…ありがと」
シカマルと短く言葉を交わし、ナルトは中央へネジと向かい合わせに立った。

「おいヒナタ、ここ空いてんぜ」
「うん」
ヒナタが倒れたこともあり少し遅れて会場へ到着したキバとヒナタは、ラッキーなことに空いている席を見つけてそこへ腰を下ろす。
「こりゃあ見ものだ」
「……ナルトちゃん…」
キバは愉快げな表情を、ヒナタは不安げな表情を浮かべながら2人を見つめた。

「…ねぇ、サクラ」
「…ぅん?」
「サスケ君が心配なのは分かるけど、ちょっとくらいナルトの応援もしてあげたら?」
サスケばかりを心配しているサクラを見かね、イノが眉を顰めながらそう言う。そんなイノに、サクラも苦笑を浮かべ、
「……そうね!」
と返した。
「といっても、ナルトが負けるわけ無いけど!」
「…確かに」
ナルトの負ける姿が想像出来ない2人は、“ネジが必ず勝つ”という考えばかりの観客を可哀想なものを見る目で見渡した。

「しっかし、あのガキがここまで残るとはな…」
「あぁ…。ま、運だけで登ってきた奴は所詮ここまでだな。あのナルトって奴」
「相手はあの日向一族だ、勝ち目は無いな」
隣でそんなことを囁く観客に、ヒナタは眉をハの字キバは盛大に顔を顰める。
「(言ってろ言ってろ。だがな、アイツを舐めてると痛い目見るぜ)」
「キュゥン…アゥァン…」
「…!なんだって!?(どこだ…どこにいる…?……、居た!)」
キバが斜め後ろに視線をやると、黒い外套で頭からスッポリと全身を覆った犬面の暗部が立っていた。
「(何でこんなとこに暗部が居んだ!?なんかあんのか…!?)」

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「……」
「…何か言いたそうだな」
ネジの言葉にナルトは無言で目を細める。
「…別に。ただ嫌な眼をしてるな、と思っただけ」
「……」
ナルトの言葉にネジもまた、不快そうに目を細める。
「…(…“嫌な眼”か…それはこちらの台詞だ。一点の淀みも曇りもない、澄み切った眼。まるで気負いがない…)まぁ良い、その方がやりがいがある。本当の現実を知った時、その時の落胆の眼が楽しみだ…」
日向一族の血継限界、“白眼”を発動させ、構えながらそう嘲笑うネジに対し、ナルトは静かに目を閉じる。
「“現実を知った時の落胆の眼が楽しみだ”…」
「…?」
「その言葉」
ナルトがゆっくりと目を開ける。
「そっくりそのまま返してやるよ、甘ちゃん野郎…!」
「…ッ、」
「……では、第一回戦…始め!!」
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