毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□中忍試験本戦!!〜始まる木の葉崩し、化け物同士と師弟の対決!〜
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「おめでとさん」
「…ありがと」
控室に着くなりシカマルから掛けられた称賛の言葉に、ナルトは一瞬目を丸くした後僅かに顔を綻ばせ、肩を竦めて短く返した。シノとシカマルの間に入り、柵にもたれてナルトは気になったことをシカマルに問いかける。
「そう言えば次はうちはの試合だけど…」
「あぁ、なんか最後に回されたらしいぜ」
「…そうなの?」
「あぁ」
「…じゃあ試合は繰り上げ…って言うことは次はシカマルの番だね」
暫し上を見上げて試合の流れを理解したナルトは、シカマルに意地悪そうに微笑んでそう言う。シカマルはそれに顔を盛大に顰め、
「…めんどくせぇ」
といつものように呟いた。棄権でもしようか、とも思ったシカマルだったが、シカマルのそんな思考をいとも簡単に読み取り、先回りしてそれを許さないのが“ナルト”である。
「逃げちゃダメだよ。ほら、相手戦う気満々じゃん、行って来なよ」
シカマルの頭脳があれば大丈夫でしょ、と微笑みを浮かべながら躊躇も容赦もなくナルトに背中を押され、シカマルは呆気なく柵から会場へ落っこちてしまった。
シカマルは暫く仰向けに寝そべって現実逃避していたが、好戦的且つ意外と短期らしい性格の相手がそれを許してくれる筈もなく、心底面倒くさいと感じながらもナルトが見ている手前、シカマルは頑張るかと思い腰を上げた。

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「…ギブアップ」
対戦相手であるテマリをその自慢の頭脳とナルトの穴を駆使して追い詰め、後一歩、というところで片手を挙げて気怠げにそう宣言したシカマルに、勝利を確信していた観客達は勿論、テマリも呆気に取られた。
「なっ…!?何故だ!!」
「何故だって…影真似の術は残り10秒も持たねぇし、術が使えねぇとありゃあ体力にもまだまだ余裕がありそうなお前に勝つ手段がないからな」
「だからって、私は認めないぞ!!」
未だ影真似に囚われながらそう喚くテマリだが、本人からギブアップ宣言が出たのだからその時点で拒否権などは無いし、第一、試合の勝敗の判断を下すのはテマリでもシカマルでも観客でもない。

審判の不知火ゲンマである。

よって…。

「勝者、テマリ!」

審判から告げられた勝者に、呆気に取られていた観客はしかし、予想外に白熱した頭脳戦の試合に興奮していたようで、ナルトの時と同じく騒ぎ立てる。
やっと終わった、とでもいうような様子で控室へと去って行くシカマルを、テマリは悔しげに見つめていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おつかれ、シカマル」
「おー」
控室へ戻ってきたシカマルに今度はナルトが労りの言葉を掛ける。それに短く返答し、己の隣で疲れたように柵にもたれたシカマルを横目で見ながら、ナルトは笑ってシカマルに話しかけた。
「相変わらず状況判断が正しいことで」
「…あー?」
「シカマルは他人より一回りも二回りも頭が回る。けれどその代わり、他人に比べて体力やチャクラが極端に少ない。
あそこでギブアップしたのは、体力にもチャクラ量にもまだまだ余裕があるテマリと、チャクラも体力も最早残り少なく、おまけに手の内が知られている影真似の他、殆ど基礎忍術しか出来ない自分を比べた結果、ギブアップという選択しかないと考えたから…そうでしょ?」
まぁ面倒臭かったっていうのも含まれてそうだけど、と付け足したナルトに、シカマルは苦笑する。
「深読みすんなよ」
「別に?どうせシカマルは一足先に中忍になれるんだろうなぁと思って」
「ナルトお得意の勘か?」
「それもあるけど。中忍に求められるのは優れた冷静な状況判断能力と状況適応能力、そして純粋に戦闘能力と知能が求められる。シカマルには戦闘能力はあまりないけど、それを十二分に補えるだけの“頭脳”がある。だから、シカマルはきっとこの試験で中忍になれると思うな、私は」
やけに饒舌なナルトに、シカマルは首を傾げながらも反論するように言った。
「俺はナルトも素質を十分に兼ね備えてると思うけどな」
シカマルの言葉にナルトはふと口を噤み、火影達の席を見遣る。
「……、私の場合は…ワケが違うから。
いくら優れたチカラを持ってたって、
いくら中忍に向いていたって、
どうせ化け物は中忍に昇格させてくれやしないよ」

そう言ってすぅっと眇めた青い瞳には、果たして何が映っているのか。

「それに、私はそこまで忍に興味は無いし」

無表情で何処か遠くを見つめながらそう呟くナルトの心情は、シカマルには分からない。
けれど、ナルトの無表情に、その無機質な青に、複雑な感情が混濁しながら浮かんでいるのだけは悟れたから。

だから、シカマルは何も問わない。

だから、シカマルは何も言わない。

それをナルトは、きっと望んではいないだろうから。
踏み込むな、と線を引かれたから。

だから敢えて、無視をする。

いつか、ナルト自身が自ら話してくれるであろうその日まで。

「…ところで、次はシノとカンクロウとか言うヤツの試合だったよね」
「ん?あぁ」
「傀儡使いか…これはシノの方が有利かもね」
「?…あー、確かにな。傀儡使いと蟲使いじゃあ傀儡の方が圧倒的に不利だもんな」
ナルトとシカマルはふと試験管が話し始めたのを見て黙った。

黙ったのだが…

「あー、ちょっと体調崩しちゃったんで棄権します」
「そう言うことは早めに言っとけ。んじゃ、第3試合、油女シノの不戦勝とする」
『……、』
カンクロウと試験管の会話に、シカマルとナルトは顔を無言で見合わせる。
そして同時にシノの方を向いた。
シノは相変わらずポーカーフェイスだったが、2人には分かった。…いや、恐らくこの場にチョウジとキバが居たならその2人も分かったであろう。

物凄く拗ねてる。

「(あー…分かりやすく拗ねてんなぁ)」
「(そりゃあ拗ねるよね…シノ意外と好戦的だからカンクロウとの試合楽しみにしてたもんな…)」
シカマルとナルトは心なしか背後に影を背負っているシノに哀れみの目を向けた。

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カンクロウの棄権から約10分程何もない時間が過ぎたところで、ずっと手元の時計を見ていた試験管が唐突に口を開いた。
「えー…最終戦ですが、制限時間一杯となりましたので……」
「…!」
「?」
ナルトがふと何かに気付き、柵に凭れていた身体を起こして会場を見下ろす。それに釣られたシカマルも会場に目線を落とした時だった。

ブワァッ!

会場のど真ん中から木の葉が舞い上がり、その場にいる全員の視界を一瞬遮る。その一拍後、顕になった人物の全貌を見て、殆どの者が目を丸くした。
「いや〜…遅れてすいません」
「…名は?」
「……うちは、サスケ」
カカシと共に現れたうちはサスケに、会場は一気に盛り上がる。その中で、シカマルは呆れたように目を細めた。
「(ったく…人に散々迷惑掛けといて、偉そうに…)」
内心でサスケに毒突くシカマルをよそに、ナルトは不適な笑みを浮かべる。
「…フッ、ビビって来ないと思ってたけど…どうやらカカシ上忍の遅刻癖のせいだったみたいだね」
「だな」
シカマル達が下を見下ろすと、カカシが頭を掻いて申し訳なさそうにゲンマと会話をしていた。
「まぁ、なんだ…こんだけ派手に登場してなんだけど、もしかしてサスケの奴……失格になっちゃった?」
「……貴方の遅刻癖が移ったんでしょう。ったく…」
「……で、どうなの…?」
「大丈夫ですよ。サスケの試合は後回しにされてましたし、時間ギリギリですが、失格にはなってません」
「あ、はははは。そりゃあ良かった良かった〜」
軽くそう言うカカシに、ゲンマは呆れたように溜息を吐いた。
「…、…サスケッ!!」
「!?」
「…ッ!?」
一方、突然サスケを、しかも下の名前で読んだナルトに、隣に居たシカマルは勿論、呼ばれた本人も驚いてナルトを見る。
先刻と同じように気楽に柵に凭れながら、しかし力強い光を宿す、その深い青の双眸でサスケをしっかり見つめたナルトは、サスケに向かって不敵に笑って見せた。
「そんなヤツに負けんなよ」
「…!!」
ナルトなりの声援に再び驚いた後、いつの間にか目の前で準備万端な状態で待って居た我愛羅を一瞬見たサスケは、もう一度ナルトを見上げると、同じように不適に笑んで返した。
「…あぁ!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ルールは予選の時と同じ、“どちらか一方が“死ぬ”か“負けを認める”かだ。勝負あったとみなした場合、試合を止めることもあるが…それは俺の判断だ」
「…ふっ…」
「……」
試験管が言い終えると同時に抑え切れないとばかりに愉悦の笑みを零す我愛羅に、サスケは訝しげに顔を歪める。

「両者、中央へ」

中央へ歩み寄った2人に観客達はいよいよ試合が始まるのだと、固唾を呑んで会場を見下ろす。
観客席側に居るカカシ達は、観客同様試合に注目しながらも暗部達の動向を気に掛ける。
ナルトは段々激しくなる嫌な予感と胸騒ぎに、胸元を強く握り締める。
「(この嫌な予感と胸騒ぎは一体…それにあの我愛羅とかいうヤツ、私と同じような…?)」
各々が抱える様々な思いを余所に、本戦の目玉試合の火蓋は切って落とされた。
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