毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□C?B?いいえ、Aランク!
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「(凄い霧ね…前が見えない)」
ボートで海を渡りながらサクラが心の中で呟く。前があまり見えないほどの濃い霧だった。
「もうすぐ橋が見える」
ボートを漕いでいる人が言う。すると、大きな作りかけの橋が見えた。あまりの大きさにサクラが感極まって声を上げる。
「わぁ〜!凄く大きい!」
「し、静かにしてくれ…!この霧に隠れて船出してんだ。エンジン切って手こぎでな」
「す、すみません…」
サクラは慌てて手で口を押さえて謝る。
「…先生さんよ、聞いてくれ。アンタの言う通りこおそらくこの仕事はアンタらの任務外じゃろう。実はワシは超恐ろしい男に命を狙われている」
「…超恐ろしい男?」
「アンタも名前くらい聞いた事があるじゃろ…海運会社の大富豪、ガトーという男だ!」
「え、ガトーってあのガトーカンパニーの…!?世界有数の大金持ちと言われる…!?」
「そう…、表向きは海運会社として活動しとるが、裏ではギャングや忍を使い麻薬や禁制品の密売…果ては企業や国の乗っ取りといった悪どい商売を業としている男じゃ。一年ほど前じゃ…そんな奴が波の国に目を付けたのは…財力と言う暴力をタテに入り込んできた奴はあっという間に島の全ての海上交通、運搬を牛耳ってしまったのじゃ!島国国家の要である交通を独占し、今や富の全てを独占するガトー…そんなガトーは唯一恐れているのが、かねてから建設中の…あの橋の完成なのじゃ!」
「なるほど…で、橋を作ってるオジサンが邪魔になったって訳ね…。じゃああの忍もガトーの手下だったのね」
サクラが納得したように頷きながら呟いた。
「しかし分かりませんね…相手は忍すら使う危険な相手…なぜそれを隠して依頼されたのですか?」
「波の国は超貧しい国で大名ですら金を持ってない。もちろんワシらにもそんな金はない!高額なBランク以上の依頼をするような金なんかな…」
タズナが少し暗い声音で言う。だが、次の明るく言った言葉でナルトを怒らせてしまった。
「まあ…お前らがこの任務をやめれば、ワシは確実に殺されるじゃろう…が!なーにお前らが気にすることはない。ワシが死んでも十歳になるかわいい孫が一日中泣くだけじゃ!!あっそれにワシの娘も木の葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!いやなにお前たちのせいじゃない!」
スゥ…と空気が唐突に冷えていく。肌を刺すような冷ややかな空気。サクラはその空気が隣の少女から発せられている事に戦慄した。怒っているとてつもなく怒っている。何がナルトの逆鱗に触れたのかはサクラには分からない。ただナルトが怒っているのは分かった。
「…あぁ、そう」
凍えそうな程に冷えた空気の中でナルトが呟く。その感情が一切こもっていない冷たい声にサクラは体がゾクリと震えたのが分かった。いつもは少しだがちゃんと温度のある、落ち着いたソプラノの声。それがいつもとても心地よく感じていた。だが、今ではそのソプラノも恐怖でしかない。こころなしかいつもより低い声でナルトは続けた。
「私達のせいにはならないから、ここで中断しても良いよね?“お孫さんが一日中泣くだけ”だもんね?“娘さんも木の葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけ”だもんね?私達は“任務外”だったから、この任務をやめて貴方が殺されてもそれは貴方が内容を偽ったから自業自得。私達は“気にすること”なんてない。だって“私達のせいにはならない”から。貴方がそう言ったから」
そこまで言ったナルトは一旦言葉を切ると、いつもの何を考えているか分からないけど、不思議と落ち着く、ナルト特有の空気に変えて、カカシにこう言った。
「という事で、帰りましょう」
「………はい?」
「だから、帰りましょう」
「ナ、ナルト?今から護衛任務だよ?それにここ船の上だよ?」
「水面歩行ならもう出来ます。私は面倒事を極力避けたい主義なので、任務外なら好都合、さっさとやめて帰りましょう」
「いやいや、でも」
「それに。タズナさんも私達が気にすることではないと、私達のせいにはならないと、おっしゃっています。その言葉に甘えて早く帰りましょう。というか早く帰りたい」
「いやでも流石にここまで来たからにはやろ?ね?」
「えー…“きちんと頼まれた”のならば話は別ですが…この場合は私達に選択権が委ねられているじゃないですか。だったら私は迷わず帰還する事を選びます」
ナルトの言葉に焦っていたタズナは、ハッとしたように目を丸くした後、頭を下げながら任務を続けて欲しいと頼んだ。カカシ達が突然の事に驚く中、ナルトは呆れたように溜息をついた。
「はぁ。最初からそうすれば良いのに…。じゃあ任務続けるね」
ナルトはそう言って先頭で前を向いて座った。
「…一応俺がリーダーなんだけど…」
カカシの情け無い声が響くが、スルーされた。
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