毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□中忍試験!!〜生き延びろ!神出鬼没な5日間のサバイバル生活!第2次試験開始!!〜
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〜サスケ・サクラside〜

突風が吹き止んだ後、サスケは土煙に紛れて素早く草むらに隠れた。右手にはしっかりとクナイを握って。
「…っ!」
気配を感じて振り向くと、サクラが立っていた。
「なんだ…サクラか」
「!サスケ君!」
「寄るな!合言葉を言え」
駆け寄ろうとしたサクラに、油断なくクナイを構えて警戒する。サクラはハッとして頷くと、サスケの合言葉の問いに、合言葉を返した。
「【忍歌・忍機】…!」
「あ、うん…!
大勢の敵の騒ぎは忍よし

静かな方に隠れ家もなし

忍には時を知ることこそ大事なれ

敵の疲れと油断する時」
「…よし」
合言葉を全て言い切ったサクラに、警戒を解く。
「サスケ君!大丈夫だった?」
「あぁ。ナルトは?」
「分からない。もしかしたら、もっと遠くまで飛ばされたのかも」
「かもな」
「ねえ、サスケ君」
「?」
「さっきナルトから貰ったものは何?」
「そういえば、なんだったんだ?」
サスケはポケットからナルトに渡された紙切れを取り出し、開いてみる。
「…!」
「…?どうしたの?サスケく…「いった…」…!?」
「!」
サクラが紙切れの中身を見ようとサスケに近づいた時、聞き慣れた、落ち着きのあるソプラノが2人の耳を掠めた。
「…なんだ、集まってたの…」
痛めたのか、左肩を抑えながら近付こうとしてくるナルトを、サクラが止めた。
「待った。合言葉」
「あー…ん。

大勢の敵の騒ぎは忍よし

静かな方に隠れ家もなし

忍には時を知ることこそ大事なれ

敵の疲れと油断する時

…どう?」
「…オッケー」
「…フン」
警戒を解いた2人に、ナルトが近付こうとしたその時。

ヒュンッ!!

「っ!?」
「さ、サスケ君!?」
「チッ。今度は俺の攻撃を避ける程の奴か」
突然、サスケがナルトに向かってクナイを投げたのだ。
「なにすんの…」
「そうよ、サスケ君!ナルトはちゃんと合言葉を言えたじゃない!」
「なら、この紙切れを読んでみろ」
「…え?」
抗議したサクラに、サスケは持っていた紙切れを渡す。

紙切れにはこう書かれていた。

【いやーマジごめん。合言葉覚えられなかった。いや本当に。ごめん。だから、合言葉の時は“知らん”って言う。知らない、とかじゃなくて、“知らん”って言うから。覚えとけ。
あと、名前のことなんだけど。あの時下の名前で呼んだのは、盗み聞きしてる奴が居るって分かったから。だから、一応予防線として。次からは苗字で呼ぶから。
まぁ取り敢えず、私が合言葉を言い切ることは無いんで。
P.S.合言葉を盗み聞きしてる奴は要注意。】

「ってことは…!」
「あぁ。こいつは偽物だ!!」
「……ふーん。そういうことね」
サスケの言葉に、ナルトの姿をした奴はペロリと舌なめずりをする。
なまじナルトの姿なだけに、動作が何処か似合っていて、ゾッとした。
ボフン!という音と共に変化を解いて現れたのは、草の額当てを付けた髪の長い不気味な女だった。

*********************

〜ナルトside〜

「……随分飛ばされたな…」
服に付いた土を払って立ち上がったナルトは、周りを見渡してそう呟く。
「…サスケには紙を渡しておいたし大丈夫でしょ。…さて、私は…この巨大な蛇さんを倒さないとね」
ナルトは後ろから感じる、明らかに口寄せされた大蛇を見つめて目を細めた。
「…風遁・切風紅華(せっぷうこうか)…開華!!」
大きく広がるように、鋭い風の刃が蛇を切り刻む。蛇から出た紅い血が、風にのって大きく広がるように飛び散る様子。それはまるで…“紅い華”が咲き誇る様だった。
「狐火」
指先に灯した火にふ、と息を吹きかけて蛇の死骸に飛ばす。すると、たちまち蛇の死骸と周りの血液だけが燃やされた。
「…うちはたちのところに行こう」
ナルトは道の様になっている風の跡を辿って駆け出した。

*********************

〜サスケ・サクラside〜

「さぁ…始めましょう…巻物の奪い合いを…“命懸けで”」
そう言ってニタリ、と嗤った草忍は、重く強い殺気を2人に浴びせる。
殺気などまともに感じたことのない2人は、強すぎる殺気に己の死を連想させられ、堪らず座り込んでしまう。座り込んだ後、サスケは耐え切れずに嘔吐してしまい、立とうとするも失敗する。
「(気の質…?いや、違う。これは…ただの殺気だ!なんてことだ…。奴の眼を見ただけで死をイメージさせられた…!何者だ…アイツ!!)」
目の前の草忍への警戒レベルを一気に上げる。
「サクラ…、ッ!?」
名前を呼びながらサクラの方に視線を向けたサスケは、サクラの状態を見て言葉を失った。サクラは全身を震えさせながら涙を流していた…そう、完全に恐怖心に打ちのめされてしまっていたのだ。
「(クソ…ッ!ここは逃げるしかない!でないと…待っているのは、“死”だけだ!!)」
サクラの状態、そして腰が抜けてしまっている自分の状態から見ても、ここは一度逃げた方が良いとサスケは判断する。
「うふふふ…もう動けないの?」
「(動け、動け、動け、動け、動け…!ほんの少しでいい…!動いてくれ…!!)」
サスケは強張って少ししか動かない体を無理矢理動かしてホルスターからクナイを取り出すと、震えながら中腰に立ち上がる。
「それで…どうするの?」
だが、相手が言葉たった一つを発しただけでも恐怖で体が動きを止めてしまう。
「(うご…かねぇ…)」
「安心なさい…一瞬で終わらせてあげるわ…。苦しむ間もないくらい…」
草忍はクナイを2本取り出すと、それを構えてゆっくりとサスケ達に近付いていく。
「もう少し楽しませて欲しかったけど…残念だわ」
少し離れたところで立ち止まった草忍はそう言うと、ひゅん、とクナイを2人に放った。

グサッ!!

*********************

バサバサッ!!
カァ、カァ……

「…鳥達が騒がしい…」
ひたすら風の跡を辿って走り続けていたナルトは、カラスが急に慌ただしく飛び立ったことに僅かに違和感を感じる。
「…嫌な予感がするな…急ごう…」
妙な胸騒ぎを覚えたナルトは、走る速度を速めた。

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「……」
草忍は、地面に残る血の跡を静かに見つめる。

「(咄嗟に自分を傷付けて…)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『(動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け、動けぇぇぇええええ!!)』

グサッ!!

サスケは自分の足に持っていたクナイを刺すと、サクラを庇いながら飛んでくるクナイを避け、そのまま逃げた。

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「(痛みで恐怖を消し去るとは…。やっぱり、ただの獲物じゃあないわね)」
草忍は血の跡から目を逸らすと、サスケ達が逃げて行った方を見つめ、ニタリ、と怪しげな笑みを零した。

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「はぁ…はぁ…」
「…サスケ君…」
「…ぐっ…!」
サスケは息を荒げながら太ももに刺したクナイを抜く。
「サスケ君…。大丈夫…!?」
サスケは話し掛けてくるサクラの口を塞ぎ、木に隠れて辺りの様子を伺いながら思考を巡らせる。
「(早く逃げないと…!ここもじきに気づかれる!どう逃げる…?どう逃げればいい…!?)」
「(あのサスケ君が、こんなに取り乱すなんて…。見たことがない…!)」
サクラは取り乱しているサスケに驚くが、ふと自分たちを覆う影に気付き、振り返る。そして、視界に入ったモノに、目を見開いてくぐもった悲鳴を上げた。
「……!?ん”〜!?ん”〜〜っぷはっ!サスケ君!ヘビ!!」
「ッ!?」
サクラの切羽詰まった声に、サスケは勢いよく振り返り、漸くヘビの存在に気付く。大きな口を開けて襲いかかるヘビを、2人は左右に分かれて跳躍する事で避けた。
「気が動転して、ヘビにも気付かねぇとは!」
サスケは跳躍し続けながら、巨木に巻きついた後再びサスケに襲いかかってくるヘビを写輪眼で見つめる。

が。

一瞬、襲いかかってくるヘビが、サスケだけ草忍と重なって見えた。

それだけでサスケは酷く動揺した。
「うわぁーー!!くるなぁーー!!!」
サスケは6枚の手裏剣をヘビに向かって勢いよく投げる。それは上手く命中し、ヘビは大きく唸って巨木へ倒れこんだ。
「はぁ…はぁ…」
近くの巨木に着地したサスケは、片膝をついて荒く息を吐きながら倒れたヘビを写輪眼で見つめる。そして、その眼をサスケだけではなくサクラまでもが驚愕に見開かせた。
何と、ヘビの中から草忍が出てきたのである。
「一瞬たりとも気を抜いたらダメでしょ?獲物というものはねぇ、常に気を張って逃げ惑うものなの。捕食者の前ではねぇ…」
そう言って不気味に笑った後、ヘビのように木に巻きつきながらサスケに近づく草忍。それにサスケが声を上げた、その時だった。

カカカカッ!!

草忍の前に、手裏剣やクナイが何本か突き刺さる。
サクラはハッと上を見上げ、手裏剣などを投げた人物を見つけた。
「悪いね、うちは」
いつもより少し大きめの、落ち着いたソプラノの声が森に響き渡る。
「ッ!?」
サスケは驚愕しながら振り返り、上を見上げる。そして、その声の持ち主を視界に収めた。
「合言葉は……知らん!」
「ナルト!」
サクラが歓喜の声を上げる。だが、サスケはナルトに逃げるように叫んだ。
「ナルト!俺たちを助けに来たつもりだろうがでしゃばるな!逃げろ!コイツは…次元が違いすぎる!」
「あの大蛇を見事倒してきたようね…ナルトくん」(←ここのナルトの“くん”付けは、この人がちゃん付けとかすると気持ち悪いのでこうしました。どうかここだけは見逃して下さい!)

「(…え、なにあれクソキモいんですけど。っていうかあの口振りからして大蛇はコイツのせいか…)」
暫し緊張感漂う沈黙がこの場を支配する。
「(ナルトが来たところで、こっちが圧倒的に不利なことには変わりない。どうする…!?)」
必死でサスケは思考を巡らせるが、煽るナルトの声がそれを遮る。
「…アナタって、弱いものイジメが趣味なの?悪趣味だね」
「(まずい…!このままじゃ3人とも殺られる…!!…もうこの方法しかない…!!)」
焦りに焦ったサスケは、最終手段を使うことを決めた。
「待ってくれ!」
『?』
急に口を開いたサスケに、全員の視線が集中する。

そして、次にサスケが取った行動と言動に、サクラだけでなくナルトまでもが驚きを隠せなかった。

いきなり自らのポーチに手を突っ込み、巻物を取り出したかと思うと、
ソレを見せつけるように持ってこう言った。
「巻物ならお前にやる。頼む。これを持って引いてくれ」
『…!?』
「……」
サスケのまさかの行動と言動にサクラとナルトは驚き、草忍は静かに口角を吊り上げた。
「…は、ちょ、うちは、正気!?馬鹿じゃないの!?」
「お前は黙ってろ!!」
我に返ったナルトはサスケに向かって怒鳴ったが、サスケは聞く耳を持たない。
「…成る程ねぇ…センスが良い。獲物が捕食者に期待できるのは…他の餌を差し出して自分自身を見逃してもらうことだけですものねぇ…」
一方草忍は、木に巻きついたままサスケの行動に笑みを浮かべてそう解説する。
「…受け取れ」
暫しの沈黙の後、草忍に向かって巻物を投げるサスケ。

だが、宙に放り出された巻物が草忍の手に収まることは無かった。

何故なら、ナルトが取ったからだ。

巻物をキャッチした後、ナルトは上手く木を蹴ってサスケの前に着地する。
「テメェッ!!余計なことすんなッ!!この状況が分かってんのか!!?」
そう己を怒鳴りつけるサスケに。ナルトは何も言わず、無言でサスケの頬を思いっきり殴り付けた。
「状況分かってねぇのはテメェだろうがうちはッ!!アイツに巻物渡したところではいそうですかと見逃すわけねぇだろうが!!!大体、巻物をアイツに渡して見逃してもらえる保証はあんのか!?ねぇだろ!?敵にビビって余計なことしてんのはテメェの方なんだよ!!それくらい分かるだろうが!!」
先程までの冷静沈着な様子から一変して、荒い口調でサスケに怒鳴り散らすナルト。またしても辺りをシーン…とした緊張感漂う沈黙が支配した。
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