毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□中忍試験!!〜対戦相手は機械任せ!第三次試験、予選試合開始!!〜
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中央に向かい合わせで立った2人は、お互い苦い表情を浮かべる。
「まさか…相手がナルトとはなぁ…;」
「私も、キバと当たるなんて思ってなかった…」
出来れば試合なんてしたくない。
そんな2人の心境など露知らず、試験官であるハヤテは無情にも試合開始の合図を出した。
「第七回戦、うずまきナルト対犬塚キバ。始めてください」
合図が出されても2人は無言のままその場を動こうとはしない。
やがて、長い沈黙を破ったのはナルトだった。
「…本当に、やりたくない。でも、こっちの事情もあるし…手は抜かない、ようにする」
「……はっ、その方がありがてぇや。んじゃ、始めますかね!」
キバがそう言ってニヤリと笑う。
それを合図に、戦闘が始まった。
素早く印を結びながらナルトが駆け出す。
「火遁・火龍炎弾!!」
口から吐き出された炎の弾は小さく龍の姿を象り、キバへ向かう。キバは持ち前の高い身体能力でスイスイと避ける。
「風遁・突破!」
上手く調節された風の力で、龍は大きく、スピードアップしてキバを襲う。キバは少し焦り、そのまま高く跳躍して全てを避けた。
上へと逃げたキバに、これ幸いと影分身をすると、2人のナルトは追い討ちをかけるが如く、またもや素早く印を結び、次なる術を放つ。
「風遁・風柱!」
「火遁・火柱!」
風と火。風は火を手助けし、より火力を増した火柱がキバへと迫る。通常ならば空中では身動きを取ることはほぼ不可能。だが、キバは一族ならではの術、【牙通牙】を上手く利用し、ギリギリ焼かれるのを防いだ。
大きく立ち昇った火柱は天井を直撃し、物凄い振動が壁を伝って全体を揺らす。観戦者達からは悲鳴が上がったが、生憎戦闘中のナルト達は観戦者にまで気を配れる程の余裕はなかった。
『…ハァ…ハァ…』
お互い距離を取りながら一度停止する。二次試験から続けての試合は些かキツイようだ。特にナルトは目の前は歪むわ頭痛はするわで疲労は最早限界近くまできていた。
が、試合は試合。
暫しの休憩を止め、今度はキバから攻撃を仕掛けた。
「獣人分身!」
ボフンッ!という音と共にキバの隣に居た赤丸が白煙に包まれ、キバの姿に変化する。
「四脚の術!」
2人のキバは、獣のように四足歩行でナルトへと駆け出す。ナルトは身体への負担を少しでも軽減させる為、キバ達の攻撃を最低限の動作で避ける。首を前後左右に傾け、体を少しずらすなどしてキバ達の攻撃を最低限の動きだけで避け続けていたナルトだったが、いきなり大きく視界が歪んだせいで一瞬反応が遅れたナルトは、キバの足払いを跳躍して避けてしまう。
キバ達はその隙を見逃さない。
「すきやり!牙通牙!!」
ドリルの如く高速で回転しながら己へと向かってくるキバ達に、ナルトは着地の勢いを活かして前転することで牙通牙を避ける。
が。
「ッ、ぁ…?」
前転したことが仇となり、唯でさえ安定しなかった視界が再び大きく歪む。耐えきれず、ナルトは後ろへ倒れ込んでしまった。
当然見逃すはずは無く。
「今だ、牙通牙!!」
ナルトの眼前にキバの牙通牙が迫る。
「ッチィッ!!影分身の術!!」
ナルトは一体影分身を出すと、影分身に己を蹴らせて牙通牙を避けた。
「ハァ…ハァ…(今のは、焦ったな…)」
「…やっぱ…強ぇな、ナルトは…」
お互いかなり疲れてきているようで、2人の息は絶え絶えだった。が、キバは先手必勝とでも言うように、再び牙通牙で突っ込んでくる。ナルトはそれを避けながらキバの攻撃を冷静に分析していた。
「(牙通牙…スピードも速く、殺傷力も十分ある…。けど、攻撃がやや直線的な為軌道が読まれやすく、また、体力を消耗しやすい…)」
現に、牙通牙のスピードや回転は先程より確実に幾分か劣っている。
「(なら、隙を見て一瞬でケリをつけることは可能かもしれない…。ッ、そろそろ決着を付けないと身体がもたない…チャンスは一瞬…)」
ナルトは身体を少しズラしてキバたちの牙通牙を避ける。キバたちはそのままの勢いで地面を抉ると、回転を止め、ナルトの方へ向く。
「(今だッ!!)」
チャクラを足に溜め、一気に放つ事でスピードを上げ、それと同時に拳にチャクラを纏わすと、目を見開いて固まるキバの鳩尾目掛け、容赦なく振りかぶった拳を振り下ろした。
「てやぁああッ!!」
「がっはッ!!?」
ナルトのパンチを見事に食らったキバは勢いよく後ろへ吹っ飛び、壁に埋もれる。
ハヤテがキバに近づいて状態を確認する。
「…勝者、うずまきナルト!」
「……はぁ…はぁ…」
ハヤテの言葉に、イノやサクラは感極まったように歓声を上げた。
「キャー!!ナルトー!!かっこ良かったわよー!!」
「やったわねー、ナルトー!!」
手放しで喜ぶサクラ達に、気恥ずかしさを覚えながらも、ぎこちなく笑みを返す。
その笑みを直視した同期のメンバーは、思わずキュン、と締め付けられる衝動に胸を押さえた。
「…?」
屈みこんでしまった同期達に首を傾げながら皆のところは向かおうと階段に足を掛けた時だった。

くらッ…

「、ぁ…?」
大きく視界が歪み、ガクン、と身体の力が急激に抜ける。意識が遠のいていく感覚に抗う間も無く、後ろへ身体が傾くのを感じながらナルトは意識を手放した。

*********************

「……、ぅ…?」
「…!ナルト、起きたか!?」
ナルトが小さく呻いたのを見たシカマルは、思わず身を乗り出してそう問いかける。ボンヤリと目を開け、暫くボーッとしていたナルトは、次第に意識がはっきりしてきたようで、シカマルの方を向く。
「…ここ、どこ…」
「医務室。お前、試合終わった後倒れたんだぜ?」
「…そ…試験、は…」
「もう終わったよ。本戦は1ヶ月後だとよ」
ナルトの問いに答え、本戦の日を教えたシカマルに、ナルトはそう、と返した後、少しの間を挟み、再び問い掛けた。
「…そのあとの、試合、は…」
「…ロック・リーって奴が、砂の我愛羅って奴と戦って…」
「……?」
「…左半身複雑骨折、だとよ」
「…、!?」
「アイツ、リーを本気で殺そうとしやがった…」
「…そう…」
シカマルの言葉に少なからず衝撃を受けたナルトは、咄嗟に言葉が出ない。
「…最終戦は日向ヒナタとネジだった」
「!どうだったの、〜ッ…!?」
「お、おい!無理に起きるな…!」
勢いよく起き上がったナルトは、酷い頭痛と目眩に襲われ、堪らず頭に手を当てる。そんなナルトを支えながらゆっくり寝かせてやると、シカマルは少し溜息を吐いてからナルトの問いに答えてやった。
「ふぅ…結果から言うとヒナタは負けた」
「…(そうだろうな…)」
「けど、ヒナタは結構成長したぜ」
「…成長?」
「あぁ。何度叩きのめされても立ち上がっては挑んでた。フラフラだってのに、諦めず、ネジに挑んでた。
アイツ、なんて言ったと思う?“ナルト君に近付きたい…!だから私は、何があっても諦めない…!ナルト君のように、真っ直ぐ、自分を、貫き通す…!!”だってよ」
「…私の、よう、に…?」
「あぁ、そうだ」
「……私、そんな真っ直ぐじゃないってかむしろ捻くれまくってると思うんだけど…」
「お前の生き方は真っ直ぐだよ(いつだって、な)」
何やら戸惑っているらしいナルトに、シカマルはらしくなく素直に思ってることを言う。するとナルトは、不意を突かれたように一瞬瞠目した後、蕾がゆっくり開花するようにふわり、と顔を綻ばせた。
「…そ、か…」
「…〜ッ!!!/////」
不意打ちを食らい、シカマルは顔を真っ赤にさせる。鈍感なナルトはそんなシカマルに気付かず、内心ドキドキしていた。
「(そっか…私はヒナタにとって、結構大きな存在だったんだな…///)」
自分は此処に居て良いんだと、言われているようで。
自分のような存在でも誰かの支えになれるのだと、言われているようで。

素直に、とても、嬉しい。

「(憧れ、か…これから先も、ずっとヒナタの憧れで居られるかな…)」
その為にはもっと強くならなければ、とナルトが改めて決意を固めた時だった。鉄製のドアが少し耳障りな音を立てて開かれる。そこから顔を出したのは、はたけカカシと七班のメンバーであった。
「よ、調子はどうだ?」
『ナルト!』
「…カカシ上忍、春野、うちは。様子を見に来たの?」
「えぇ。だってアンタ、急に倒れるんだもの!ビックリして心臓止まるかと思ったのよ!?」
「多分そんなことで心臓は止まらないと思「そんなマジレス求めてないわよ!!しゃんなろー!!」…はいはい」
相変わらず春野は煩い…とナルトが内心で顔を顰めていると、サスケと目が合う。
「……」
「…(めっちゃ睨まれてるんだけど…(;¬_¬))」
ナルトは何故か物凄く睨んでくるサスケからスス…と視線を逸らす。
「おい、ウスラトンカチ」
「…私の名前は“渦巻ナルト”なんだけど」
「…フン、知るか。急に倒れるからだ」
「はぁ?」
意味の分からない理由でサスケからの呼び名を“ウスラトンカチ”にされた事にナルトは思いっきり顔を顰める。が、まぁまぁ、とサクラが間に割って入ったお陰で口論までには至らなかった。
その後、カカシに色々質問されながら脈拍や体温などを計られ、今日はここで一夜を過ごせと指示を受けたナルトは、素直に頷く。
「んじゃ、明日迎えに来てやるよ」
「え、良いよ別に」
「馬鹿。そこは有難く受け取っとけ」
「シカマルってナルトの事に関しては面倒くさいって言わないわよねぇ〜」
「うるせ」
迎えに来るというシカマルにキバが俺も俺も!と騒ぎ立て、結果として2人が明日、ナルトを迎えに来る事に決まった。
「じゃあ私達はもう帰りましょ」
「そうだな。ナルトも疲れてるだろうし」
「シカマル達の方が疲れてるでしょ。早く帰ったら?」
「そうする。んじゃあなー、ナルトー!」
「うん、また明日」
気を遣って退出していくメンバーに手を振って、ナルトはふぅ…を溜息を吐く。
「(…なんか、いつのまにか周りにいる人が増えてる…気がする…)」
最初は三代目やイルカ、シカマル達やキバだけだったのに、今はそれに加えて七班のメンバーが入ってきた。
「(シカマル達に比べればまだ距離は遠いけれど、近いうち七班のメンバーも“内側”に入って来るんだろうなぁ…)」
そう思いながら、ナルトは無意識に口元を緩めた。


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