毒舌ナルト(女) 忍法帖!!

□中忍試験本戦!!〜始まる木の葉崩し、化け物同士と師弟の対決!〜
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「ルールは予選の時と同じ、“どちらか一方が“死ぬ”か“負けを認める”かだ。勝負あったとみなした場合、試合を止めることもあるが…それは俺の判断だ」
「…ふっ…」
「……」
試験管が言い終えると同時に抑え切れないとばかりに愉悦の笑みを零す我愛羅に、サスケは訝しげに顔を歪める。

「両者、中央へ」

中央へ歩み寄った2人に観客達はいよいよ試合が始まるのだと、固唾を呑んで会場を見下ろす。
観客席側に居るカカシ達は、観客同様試合に注目しながらも暗部達の動向を気に掛ける。
ナルトは段々激しくなる嫌な予感と胸騒ぎに、胸元を強く握り締める。
「(この嫌な予感と胸騒ぎは一体…それにあの我愛羅とかいうヤツ、私と同じような…?)」
各々が抱える様々な思いを余所に、本戦の目玉試合の火蓋は切って落とされた。

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途中まではほぼ互角…いや、少しサスケが優勢であった最終試合。
しかし、サスケが修行でカカシから譲り受け修得した術、“千鳥”を使用したことにより事態は急展開を迎えた。

我愛羅の砂はオートで我愛羅を守る。

それは殆ど破られる事のない“絶対防御”とまで呼ばれる程のモノだった。
だが、サスケの千鳥はまだ未完全であった我愛羅の“絶対防御”を突き破り、見事我愛羅にダメージを与えることに成功する。
しかし、それが引き金となり、我愛羅の内に潜む“化け物”が顔を出し始めてしまった。
さらにはその混乱に乗じて会場全体に広範囲の幻術が掛けられ、観客は瞬く間に意識を失ってしまい、潜んでいた暗部と敵忍たちが戦闘を始めた。
いち早く気付き幻術返しを行い幻術に掛かるのを防いだサクラは、カカシからパックンと共に任務を課せられた。

「…波の国以来の“Aランク”任務だ」
「ーーー!」

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「…幻術ね…」
九喇嘛のお陰で幻術の類は一切効かないナルトは解術する仕草を見せず、瞳を眇めて観客席の方を見遣る。そしてふと影が座る観覧席に視線を移し、その眼を驚愕に見開かせた。

ナルトの視線の先には、風影にクナイを突きつけられている三代目の姿が。

ナルトはすぐにでも駆け寄りたくなる気持ちを、唇を強く噛み、掌を強く強く握り込むことで抑えつける。
先程我愛羅達砂の下忍とサスケの気配がここから離れていくのを感じた。恐らく自分はそれを追いかけなければならない。
今やるべきことは、火影に加勢することではない。
「……くそ…ッ…!」
ブツッ、と爪が肉に突き刺さる音が聞こえたが、今のナルトには握り込む力を押さえることは出来なかった。

酷い胸騒ぎはおさまりを知らず、嫌な予感はどんどん胸の内を侵食していく。

ナルトはこちらへ来たパックンとサクラの話を聞き流しながら、いつも当たってしまうその嫌な予感が、今回ばかりは当たらなければいいと強く願った。

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「恐らく、囮になった奴は…死ぬ」

1人で我愛羅達を追ったサスケを追う為、カカシの忍犬、パックンを先頭に木の上を跳んでいたナルト達は、シカマルの言葉に足を止めた。

追手はナルト達…正確には我愛羅を追って姿を消したサスケを始末する為、着々と距離を縮めてきていた。時間稼ぎの為に足跡を消したように見せたりしたものの効果は無く、追手は見つからずとも遠からず、のところまで迫って来ていた。
このまま進んでいれば、サスケに追いつく前に先に追手に追いつかれてしまう。
ならば、その前に待ち伏せをして追手の隙をつき撃退した方が良い。
確かに待ち伏せは無茶有利な戦術である為、状況を考えればそれが最もな判断だと誰もが思うだろう。
しかしサクラが出したその案は、その他全員…特にパックンとシカマルに却下された。

待ち伏せをするにあたって、外せない必要条件が2つある。


その1、逃げ手は一切音を立てずに行動し、先に敵を発見する。


その2、追手の不意を狙うことができ、確実なダメージを与えられるポイントとポジションを獲得し、素早く潜伏する。


この2つが成されて初めて、“待ち伏せ”という戦術は有効になるのだ。

1つ目に関してはパックン(忍犬)の鼻がある為、然程難しくはないだろう。2つ目に関しても、自分達の里であるナルト達の方が一見すると地理をよく知っていて、有利…だと思うだろう。
しかし、現在ナルト達のことを追っているのは元“木の葉の忍”であった大蛇丸の部下だ。そうともなれば、この手は恐らく効かない可能性の方が高い。
というか、大蛇丸が木の葉崩しにあたって何もしない訳がない。

恐らく、大蛇丸の部下は木の葉の地形を叩き込まれ、この時の為に模擬練習を重ねに重ねて来ている筈で、当然追跡術をマスターした忍者ばかりの筈。

まぁ、そんなこと言っても待ち伏せが有利に変わりはないが、ナルト達が実行するには不確定要素が多く、危険すぎるのだ。

しかも、追手は恐らくこの作戦の為だけに編成された特別部隊。対してこちらは、急ぎの為に駆り出された下忍が3人と戦力にもならない犬が1匹。

戦略とは、目の前ある状況を確実に掴み最善策を練ることだ。

それらを考えれば、ナルト達4人(3人と1匹?)に出来る事といえば唯1つ。


“待ち伏せに見せかけた陽動”…である。


1人が待ち伏せと見せかけて残り、足止めをする。

いわば、囮になるのだ。
足止めを掛けられれば、残りの3人の位置は掴めなくなる。
完全にとは言い切れないが時間稼ぎにもなり、追跡も撒けるだろう。

唯、囮になった者は恐らく、いや、ほぼ確実に…死ぬだろうが。

たった1人でも上忍も居るであろう追手部隊を倒せる筈ないのだから。
加えてサクラ以外は本戦のせいで体力は無いに等しい。

勝率など万が一にもある筈無い。

「…で?誰がやる?犬さんはサスケを追うのに必要だ。とすると…」
サクラは唇を噛みしめ、ナルトは静かに目を閉じる。
「(…私なら、2人よりも強い。慢心してるつもりはないけど、追手ぐらいすぐに蹴散らしてパックン達を追える筈。なら…)…分かった、なら私が…」
「俺しかないかぁ…」
「シカマル!?」
「ッ、なんでシカマルが…ッ!?」
暫しの沈黙の末、名乗り出ようとしたナルトの声を遮ったのは、諦めと面倒臭さ混じりのシカマルの声だった。
驚愕するサクラとナルトに、シカマルは冷静に返すり
「全滅するよりマシだろ。それに、囮役を十分にこなせて、且つ生き残る可能性のある奴と言ったら…」
シカマルはジッと見つめてくる2人を飛び越え、一つ後ろの元来た方角に位置する木に着地する。
「こん中じゃ、俺1人だけだろ」
「私だったら…!!」
珍しく声を張り上げてシカマルに抗議するナルトに、シカマルはニッと不適に微笑んで首を振った。
「ナルトは駄目だ。それに、影真似の術は元々…足止めの為の術だからよ」
「……」
「ま、後で追いつくからよ。…とっとと行け」
そう言ってシカマルが前を向き、自分達に背を向けたのを、暫くジッと見ていたナルトは、やがて目を閉じると、ゆっくり頷いた。
「…シカマル、頼んだ」
こちらを振り向かず、片手を少し上げることで返事をしたシカマルを確認すると、ナルトはサクラと頷き合い、シカマルに背を向け、先へ進んだ。

心配しない訳がない。

だが、1つの気配を感知したナルトはシカマルが死ぬことは多分無いだろうと判断し、あの場をシカマルに任せたのだ。
「(頼んだよ、シカマル…アスマ先生)」

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