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□遠い空で 1
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ー遠い空で心つなぎ 話の続きをしよう




side 主人公

渋いと言われるけれど、大好きなDEENの曲を聴きながら学校へと向かった。

今日は総北高校の入学式。
昔 テレビで見たTour de Franceに衝撃を受け、自転車競技部に入部することを楽しみにしていた。

正式にマネージャーとして入部届けを出した私に色んなことを教えてくれたのは3年生マネージャーの亜由美さんだった。

亜由美さんは飛び抜けて美しく、早朝から夜遅くまでみんなの練習に付き合い、マッサージまでこなすスーパーマネージャーだった。
同性の私を含め、みんな亜由美さんのことが好きなのではないかと思う。
事実、金城さんは本気で亜由美さんを好きで、私が見る限り亜由美さんも金城さんのことが好きだと思う。

「ゆうこちゃん!よろしくね!
それと巻島ーっ!今日は巻島の練習に付き合うからねー!」

「っショ!」

私は今年インターハイ制覇を目指すチーム総北のメンバーの為にまずはマッサージの勉強から始めた。

身体の構造や筋肉について学ぶのはとても楽しく、どんどん吸収していき、部員みんなの身体も触れるようになっていった。
私の得意分野だったようだ。
みんなの身体を見て、どこの筋肉をほぐして整えるべきか手に取るように分かり、それはみんなに重宝された。

昨日、田所さんのハムストリングを中心にほぐしたらタイムが縮んだなぁ。とか今日は巻島さんの手がぶれやすいから上腕部を念入りにしようとか。

「亜由美の大声もすごい迫力だけど、ゆうこもすごいっショ!」

「ゆうこちゃん!今日は金城と今泉と小野田をお願いねー!」

「はーい!!」


1年生レースや合宿を経て、ついにインターハイが始まった。



このインターハイで私は彼に出会うのだ。

1日目は総北、箱学、京伏の同着1位。
2日目は惜しくも箱学に1位を奪われた。
そしていよいよ最終日。
泣いても笑っても今日のゴールが全てを決める。

2年の手嶋さん、青八木さん、1年の杉元くんと共に私達も神崎さんの車に乗り込む。

しばらくして異様に膨らんでいる集団を見つけた。
心がざわつく感じだ。

「亜由美さん‥この集団って‥」

「うん。何か嫌な予感がするね‥」

集団を抜けた少し先に小野田くんを見つけた。

「良かったー!小野田くんいた!ん?箱学の人達と走ってる?!」

手嶋さんが協調について教えてくれる。
すると亜由美さんは車の窓から身を乗り出した。

「荒北ーー!!行けーー!!」

!!??
(何で亜由美さんは箱学の人を応援してるの?!っていうかあの人は荒北さんって言うのか)

「うちの小野田を引っ張ってくれてるんだから応援しなきゃ!!」

手嶋さん達は苦笑いだけど妙に納得した私は必死で叫んだ。

「荒北さーん!!小野田くーん!!」
私は荒北さんの魂の走りに圧倒され、目を奪われた。


「‥小野田チャン。何で総北のマネージャー達は俺の名前を呼んでる訳ェー??」

「き、きっと荒北さんが僕のことを引っ張ってくれているからだと思います!です!」

「ハッ!総北は不思議チャンの塊だなッ」

「俺もいるんだけどなー。」と真波。


その後、最後までハラハラの連続だったけれど、小野田くんは優勝した。
すごい。小野田くんは本当にやってのけたのだ。

こうして夏のインターハイは幕を閉じた。






突然、巻島さんはイギリスへ行ってしまった。
悲しみに沈む私達に2つのニュースが飛び込んできた。

1つ目は金城さんと亜由美さんが付き合い始めたこと。
2つ目は来月、箱根学園と2泊3日の合同合宿を行うことになったということ。
これは金城さんと福富さんが話し合って決めたそうだ。

また荒北さんの走りが見れる。
そう思うと私はワクワクした。
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