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□遠い空で 2
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side 荒北

彼女が出来てからもゆうこチャンとは今まで通り連絡を取り合っている。

俺は一人暮らしをしているから彼女は時々泊まりにやって来る。
そんな時でもゆうこチャンから着信があれば必ず出る俺に向かって

「靖友に時々電話かかってきてるのって誰から?」 と彼女は聞いた。

「あー。後輩。」

ゆうこチャンは正確には金城と亜由美の後輩だが、説明するとややこしそうなので俺は後輩、とだけ答えた。

彼女は納得していない様子だったが
「そうなんだぁ。」と言った。

彼女とはキスやその先までしたりするが、好きだと口に出したことは無い。
以前亜由美に聞かれて「分かんね。」と答えたのは本心だった。





side 主人公

モヤモヤとした気持ちを深く考える暇もないぐらいに私はインターハイの練習に打ち込んでいた。

自分を追い込んでいく程に荒北さんの声が聴きたくなった。
話していると荒北さんの優しい顔を思い出す。

(この気持ちってもしかして‥。いやいや、とりあえず今はインターハイのことだけ考えよう。)

こうして2年目のインターハイを終えた。
今年も熱い戦いだった。

頑張った部員たちは、みんなで海に行こうと話している。

「ボク達明日海に行くんだ。」
小野田くんが話している相手は箱学の真波くん。

「坂道くんいいね!俺たちも海に行っちゃおうかなぁ。」

「えっ真波くん達も来るの?すごく楽しそうだね!真波くんに会えるの楽しみにしてるよ。」

と言う不思議チャン同士の会話を経て箱学のメンバーも海に来ることになったのだ。

その話を亜由美さんにすると
「私達も行きたい!」となり、金城さん、荒北さん、待宮さんという洋南組も参加することになった。


翌日、チーム総北が到着すると、チーム箱学はすでに海で遊んでいた。
箱学はインターハイ後に1年女子マネージャーが3名入部したそうで、彼女たちのはしゃぐ様子が見えた。

「坂道くん!ゆうこちゃん!」
走ってきたのは真波くんだった。

真波くんは目の前に立つと、私のパーカーをさっと脱がせた。

「わぁ。ゆうこちゃんの水着姿可愛いね!」

真波くん‥あなたのやってる事は完全にセクハラだよ‥。と恥ずかしくなる。


洋南組の到着はもう少しかかるとの事だったので、私は鏑木たちに誘われるまま海へ入った。

ひとしきり遊んで海から上がった所に、金城さんと亜由美さんが並んで歩いて来る姿が見えた。
私達は再会を喜んだ。

そしてそのすぐ後ろから荒北さんと待宮さんが見えた。

「荒北さんっ!」

私は荒北さんに走り寄り、自然と抱きついていた。

(あれっ私何してるんだろう‥)

その様子を側で見ていた金城さん、亜由美さん、待宮さんも固まっている。

我に返った私は
「勢いよく飛び出しちゃいました。えへへ」とごまかしながら離れる。

(やばい。これはやばすぎる。)
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