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□2年 12月 誕生日
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今年の12月4日は日曜日だから、前日に家呼んで当日は一緒に過ごそう。
まぁ、いつもの週末と変わらない過ごし方やけど。

11月25日木曜日。
誕生日まであと10日の時点で未だプレゼントが決まらず、買うなら今週末ぐらいに買いにいかなければまずいのではと焦り始めていた。

今まであげたことなかったから何がええんやろ。

誕生日の日に会えば「おめでどう」ぐらい声をかけてジュースをおごってあげたこともあったが、こうして改まってあげるというのはなかった。
夏にあげたかんざしは浴衣に合わせて何か付けてもらいたいという目的があったから良かったが、今回はゼロから考えないといけなく困ってしまった。
実はこの数日さとみの動向を見て何かあればと探っていたが、特に見つからないまま過ぎていた。

俺も物欲あんまないから人が欲しい物に気が付かへんのかな。

彼氏なんにわからないなんてと言われそうだが、こうなるとあとは周りに聞くしかないのか。
まずは、一番仲のいいあかねちゃんか。
付き合い始めてからさとみは昼休みに俺と過ごす事が多くてなって彼女には悪いと思っていた。


サロンで携帯片手に相手は彼氏なのかソファに座って楽しそう話していた。
近づいていくと自身を指さして自分に用なのか首をかしげてきた。
「友達に呼ばれたから」と電話を切る彼女へ邪魔したことを謝って横へ座らせてもらうと、足を組み替えてこちらを覗き込んできた。

「どうしたの?」

若干ニヤついた表情で聞いてくる彼女に全てバレているとわかってはいたが、素直に言わないと教えてくれないだろうからと事情を話した。

「やだ〜初心だね〜今までの彼女はどうしてたの?」

とチクリと痛いところをつかれて、からかわれてしまう。
今までの彼女は大体何が欲しいかわかりやすかった子が多かったし聞けば教えてくれた。どうせさとみは聞いたところで「無い」と言われるのがオチだ。

「あかねちゃんはあげへんの?」

からかわれるのは好きじゃないから聞き返してみると、お互い上げた事がないらしい。

「そういうもらってあげてとか、気を使いたくないから。まぁ彼氏は別だけど」

さとみと根本的な考え方は一緒なのかもしれない。だから親友としてここまでうまくやってこれているのだろう。
「ん〜でもなんかあったかな〜」と腕を組んで背もたれへ体を預け悩んでくれているが、特に思いつかないようだった。

「おおきに。また何かわかったら教えて」

これ以上ここにいても彼女にからかわれるだけなような気がして、この場を後にした。
1番近くにいる友達でもわからないなら、次は一番さとみの事を知っているあの子か。
1年生の教室を覘いてみるがそもそも何組かわからないのでその辺にいた子に声をかけて教えてもらう。
だが、その教室へ行っても当の本人がいなくて無駄足になってしまった。

まぁ、明日でええか。


次の日も後輩ちゃんは昼休みにいなくて、昨日俺が訪ねてきた事をクラスの子は言ってくれていたようだが、俺をあまりよく思ってないあの子の事だから今日はわざと避けているのかもしれない。

後輩ちゃんに聞いて週末買い物に行こうと思てたんに。

こうなったら部活の時間に聞いてみようと、跡部が生徒会でいないのを確認して、外周を走った後の休憩中に弓道部へ寄ってみた。

「…なんですか」

案の定ムスっとした顔で弓道場の入口へ出てきてくれた彼女に事情を話すと予想していた通りの反応が帰ってきた。

「彼氏なのにわからないんですか」
「そこを言われると痛いんやけどな」

ドアに手をついて背の小さい彼女を見下ろしていると、俺が来ている事を聞きつけたあかねちゃんが近づいてきた。

「忍足君、菅野にまで聞きに来るなんてすごい必死じゃん」

真顔で言われて恥ずかしかったが背に腹は変えられない。
「菅野なんかないの?」と俺の代わりに再度きいてくれる彼女に

「私も今回誕生日プレゼントあげようと思ってるんですよ…」
「えぇ〜あんた達親衛隊は陰ながら見守ってるっていう話でしょ?」

なんで知っているんだと驚いた顔していたが後輩ちゃんも今回はちょっと事情が違うらしい。言いづらそうに、

「・・・この間、華先輩がゴムが切れたって聞いたから・・・」

え?ゴム?別に切れてへんけど。ちゅーか管理してるの俺やから知らへんはずなんやけど。

「あ〜君。今考えてるそれと違うから」
「え?…なっ!?最低です!!何考えてるんですか!?」

だから言いたくなかったんだって半泣きであかねちゃんに抱き着いて、こちらを軽蔑した目で見てきた。

「ヘアーゴムだって」

そんな彼女の頭を撫でながら代わりにあかねちゃんが答えた。

あぁそのゴムな。
ビビらせんといて。

「お気に入りの雑貨屋さんに明日買いに行こうかと思ってるんです…」

部活中は髪をポニーテールにしているさとみが、数日前にいつも使っていたそのヘアーゴムが切れてしまったらしい。

「忍足君に譲ってあげたら?」
「えぇ〜…でも…」

あかねちゃんの一言に落ち込んで、俺の顔を見る後輩ちゃんに、これでは先輩二人がいじめをしていると思われてしまう。
現に弓道部の他の子もこの光景に眉をひそめてこちらを見ている。

「ええよ、俺は別の探すから。すまんな菅野ちゃんおおきに」

俺は夏にかんざしあげてるし、また髪の毛に関する物をあげるのも代わり映えが無いからとヘアーゴムの案は後輩ちゃんにお願いした。


「侑士?どないしたん?」
「忍足君がさとみに会いたいって」

三人とも話に集中していて後ろから来たさとみに気づかなかった。
咄嗟にあかねちゃんがフォローしてくれたが、部活中にこうして会いに来たことなんてなかったから怪しまれてないかと不安になる。
それに部活に跡部かいないという事はさとみだって居ないとわかっているはずなのだから。

「何や急用やった?」
「あぁ…いや別に」

歯切れが弱く思わず目が泳いで、あかねちゃん達を見るともう用はないと判断してか奥へ入っていってしまった。
首の後ろに手を回して狼狽えていると、さとみがゆっくり間を詰めたてきた。

「どうしたん?」

俺の怪しい言動に心配そうに覗き込んでくる。
別にやましいことはしていないが、彼氏なのに彼女の事がわからなくて必死に聞きまわってるなんてかっこ悪いところ知られたくない。

「跡部が中々顔出さへんからどうしたんかなって」
「もうすぐ来ると思うけど・・」
「さとみが来たならそうやんな。おおきに」

さとみなら知ってるかと思って、とちょっと無理矢理感のあることを言って逃げてきた。
不思議そうな顔をしていたが大丈夫だっただろうか。


結局収穫はゼロか。



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