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□先生の言う通り ka
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先生の言う通り

待ち合わせ時間より大分早くついた暇潰しで公園のベンチに二人ならんで座る。
きゃあきゃあと楽しげに通りすぎる女子高生の集団を眺めていたが、ふと、隣が気になり視線を横にずらす。
「もし、あろまが女の子だったら可愛かっただろうね」
スマホを眺めていた隣の男がのっそりと顔をあげる。
その顔は不愉快そうにしかめられていた。
「なんだよ急に」
「んー、何となく?」
深い意味はないよ。と言い添えれば、話に乗る気になったのか、ため息を吐いてスマホをポケットにしまったあろまは、馬鹿か。と短く切り捨てた。
「前提から間違ってる。もし俺が女だったらお前会ってないぞ」
「なんで?」
「最初の紹介はFB の友達だからって事だった。もし俺が女だとしてそんなん呼ばれるわけないだろ」
当たり前、と言わんばかりの一言に、あぁ、と納得した。
「妄想は勝手にすりゃいいけど、現物前にしてやるなよな」
「えー、妄想も禁止?」
とんだ鬼だ。と嘆くふりをしてみれば、鬼ですがなにか?とすました声が帰ってくる。
いやいや、お前が掛けてんのは般若じゃん。と条件反射で突っ込む。
いつもとは逆な役回りだが、二人揃って吹き出す。
「なぁ、女装ならいくらでもってはいかないけど、やるよ」
「それ、本当?」
流石、ファンの前で女装した男。
躊躇いなく男前に頷いたあろまにぐらりとクる。
「だから、馬鹿な妄想してないで現実の俺を見ろ」
「………完敗です」
ホールドアップで敗北宣言。
熱烈な告白に抗える人間ではないのだ。
そう思いつつも、先程の言葉を叶えてもらうための算段をつけはじめた。


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