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□男の願望 ka
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一時期よりもだいぶ肉のついた腹に腕を回してぎゅうぎゅうと遠慮なく抱きつく。
「あのスカートはないよー」
ぶぅぶぅと文句を垂れ流せば、ウンザリとした表情であろまは振り返る。
「もう撮っちまったんだからいい加減諦めろ」
「だってさー、三人で女装ってのはネタになるけどあの二人下にズボンっつー残念振りなのに、なんであろまだけまた、ミニスカ生脚なわけ?」
しかも俺に相談なしとか。
先日撮った動画の事だ。
学力テストだからと制服なのも、三人が女装なのもいつものこと。
薄っぺらい赤いチェックのスカートだって前回と一緒だった。
が、由々しき事が一つあった。そのスカートの丈だ。
「短すぎる。何折したのさ、あれ」
「あーパンツ見えない程度?」
動くわけじゃないからどうでも良い。と言わんばかりのお答えにギリギリと歯ぎしりした。
「だろうね!捲ったらすぐ見えたからね!お前のパンツ!」
「モザイク掛けたし、今更だろ」
恥ずかしがるような浅い付き合いでもあるまいし。とごもっともだが、聞き捨てならないセリフに逆に勢いを失い、項垂れる。
「そうじゃなーい」
「じゃあ、なに?」
うな垂れた拍子に抱きついていた腕の力が緩んだのか、よっこいしょ。と掛け声とともにあろまが体ごと向き直ったのに、顔を上げた。
「オトコの願望だろ?女子高生。まぁあんなゴツい女は居ないけど」
「あろまなら何でも萌えられるけど!やっぱり女子高生じゃ無いわけよ」
「んん?」
何の話をしてるんだ?とばかりに首をかしげるあろまをジッと見つめる。
「動画の話、してたよな?」
「あれはもう撮っちゃったから目を瞑る。やっぱりミニスカートなんて即物的なエロより匂い立つようなエロスでしょ」
「はぁ?」
「つーか、洋服よりも和装!」
洋服よりも和装は体の線がもろに出る。
女性であれば補正のためにタオルを巻くらしいがオトコはほぼそんなことはしない。
いやいや、女装なら是非とも喪服で未亡人と借金取りごっこもやりたい。
「…いい」
「何がだ!その考えた事口に出すなよ!ろくなことじゃ無いだろ絶対」
「えー、仏前とか背徳感増し増しじゃん」
「この罰当たり!」
「神さま信じてない癖によく言うよ」
「AVの見過ぎだ馬鹿野郎っ……ぁ馬鹿!」
押し倒し、肩に力をかけて乗っかれば、あろまの顔色がサァと青くなった。
こうすれば体格の関係上身動き取れずされるがままなのを体で分かっている彼は唯一自由になる口から罵倒を垂れ流している。
「撮っちゃったもんは仕方ないし、和装が一番いいのも本当だけど、やっぱりねぇ?あのスカートの丈は短すぎるよ」
最初の話に筋を戻して、ニッコリと笑いながらパーカーの裾から手を入れた。
いくらネタのためであっても、ムカつくもんはムカつくのだ。


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