こってりデザート(走灰R-18)
□Sleeping Beauty
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逸る気持ちを抑えきれずに腰が突っ走る。浅い箇所を抉るようにしての挿入に、組み敷いた肩がびくんと跳ねた。
「んっ、あ、ああっ!ぅ……は、……っは、え、なに、」
狼狽えたような清瀬の口調。どうやら、ようやく目を覚ましたらしい。
首を回してこちらを見上げようとする清瀬のこめかみに口づけた。
「ハイジさん」
「か、ける、なにして、」
眠りの世界から引きずり起こされた清瀬の声に芯が宿ってくる。
「えろい夢、見てたでしょ」
ね、ハイジさん、と耳元に吹き込んで奥までいっぱいに満たしていけば、清瀬の背中が震えてうめき声が漏れる。
逃れようにも、ぺったりと上からベッドに押さえつけられてしまった身体は身動きすることもままならない。シーツの上に両脚がぴんと伸びて揃えられているせいか、いつもより締め付けが強い。そのことは走に強い快感を与えていたが、清瀬にもたらされている感覚も普段に比べて強いのだろう。声もなくシーツを握り締め、色に染まった背筋をうねらせている姿はいつになく扇情的だった。
押し込んでいた腰を上げていけば、みっちりと熟れた内壁の粘膜と熱の塊が擦れて爆発的な気持ちよさが思考回路を焼いた。
「は……最高」
呟いて、腰を振る。
清瀬の方が先に達して、中の動きが激しくなった。狭くなる内部を掻き分けるようにしての抽挿は頭が馬鹿になりそうなくらい気持ちがよくて、身体が止まらなくなる。
肌と肌がぶつかる乾いた音と、性感の塊同士が摩擦して響く濡れた音。頑丈で滅多なことには動じないはずのベッドがぎしぎしと軋んだ。
「や、あ、んんっ、ん!あ、ぁ、やだ……走、」
懇願するような喘ぎも走を煽る燃料にしかならなくて、白い背中に覆い被さった。唇を落とした箇所からだんだん背骨に沿って這い上がっていき、うなじに吸い付く。ほんのりと紅い花を咲かせてから肩甲骨に歯を立てて。すぐに反応する敏感な身体はひどく乱れていた。
いやだ、やめろ、と切れ切れに繰り返すのを無視して走はひたすらに清瀬を貪った。引けば中をわななかせ、奥を穿てば根元まで包み込まれる感触に走もついに臨界点を越える。
上から組み敷かれて動けない清瀬の肩を掴んで更に押さえ込み、下から突き上げた。顔を伏せた枕へとくぐもった悲鳴を上げた清瀬がびくびくと腰を震わせて再度絶頂し、精を強請るような蠕動に抗えずに走も吐精する。
搾り取るようなうねりの中へ、放った欲を擦り付ける気持ちよさと言ったら。腰で弾けた快感が背筋を駆け上がり脳天にまで響いて走はうめき声を上げた。
熱を吐き出して少し頭が冷静さを取り戻す。それでもまだ熱の残る息を吐き出してゆっくりと腰を引けば、出すものを出してくたりと萎えた自身と清瀬の後孔の縁との間で結ばれる白濁の糸。走の形に開かれた入り口が物欲しげにひくひくと痙攣している光景は、かなり破壊的な威力があった。
清瀬は枕に顔を埋めたままで、ぴくりとも動かない。意識を飛ばしたのだろうかと心配になったところでようやく身じろぎをすると、ぐす、と鼻を鳴らすものだから慌てた。
清瀬が泣いている。
痛かったのか、苦しかったのか。半ば青ざめながら清瀬の身体をひっくり返して仰向けにした。
「ハイジさん?!」
「……いやだって、言ったのに」
目蓋が少し腫れていて、枕に顔を埋めていたせいか額の辺りが赤くなって皺が付いている。何度も達して吐き出した精液で腹から鳩尾にかけてが白く汚れていた。
「合意のないセックスは強姦なんだぞ」
涙の膜が張った瞳に睨み上げられても効果は半減だったが、すみません、と口の中でもごもごと言いつつ走は弁解をする。
「でもハイジさん気持ちよさそうだったし、」
「強姦は犯罪だ」
「……ごめんなさい」
ちょっとばかりうなだれる走に、清瀬は大きなため息をつくと腕を伸ばしてきた。苦笑を浮かべている。
「そんな顔をしないでくれ、弱いんだ」
頬を撫でられたかと思うと軽く摘まんで引っ張られる。
「どんな顔ですか」
「捨てられた子犬みたいな顔」
「なんだよ、それ……」
「ははは、可愛いよ」
お怒りは少し解けたらしい。
走は清瀬の唇にそっと唇を重ねた。束の間その甘さを味わった後で、清瀬は話を続ける。
「きみとのセックスは好きだが、自分の知らないところで好きにされるのは好きじゃない」
「はい」
「いきなり後ろから無体を働かれるのはちょっと怖いし、」
「すみません」
「するならきちんときみのことを受け止めたいんだ。一方的なのは、なし」
頷きかけた走は、言葉の意味を咀嚼し固まる。
「ハイジさん」
「なんだ?」
「勃ちました」
「は?」
きちんと受け止めたいとか、そういうの、反則でしょ。
若い身体が欲するままに再び脚の間に滑り込めば、清瀬の顔に焦りがよぎる。
「おい、走、何して、」
「自分で準備するくらい、欲しかったんですよね、俺のこと」
「走、」
「俺も欲しかったんです、ハイジさんのこと。だから、受け止めてください」
「待て、走、さっきイったばっか……っ!!!」
制止を無視して膝裏を押し広げると一気に奥まで突き入れた。
清瀬が声にならない悲鳴を上げて首を仰け反らせ、身を捩る。薄くなった白濁が力なく溢れ出て腹の上へと注いだ。走が緩く押し込むたびに、ぽたぽたと壊れた蛇口のように精液を漏らして臍の窪みに卑猥な水たまりを作っていく。
内壁のうねりに持って行かれないように歯を食いしばりつつ、走は上体を倒すと清瀬の額とそれから頬に唇を落とした。
「……ハイジさん」
清瀬が目蓋を持ち上げて、熱に溶けた眼差しを向けてくる。ちょっと眉をひそめ、ふいと視線をそらしてしまうのはやっぱりご機嫌斜めを引きずっているのだろうか。その割に内部は走のことを食んで引き込み離そうとしないのだけれど。
「ねぇ、ハイジさん」
「……」
「ハイジさんてば」
「……俺は、おこってたのに」
そんな顔で言われても。
早く動きたいなぁとか思いつつ走は神妙な態度を取り繕って「はい」と返事をしておいた。
「ハイジさんの嫌なことは、もうしませんから。だから、」
腰を使って奥をぐりりと刺激すれば、途端に清瀬の身が竦んで息を飲む気配がする。
「これをどうして欲しいか、言ってください。ハイジさんの好きなように、しますから」
既に上気していた清瀬の頬に、更に赤味が差したように見えた。
「……きみはたちが悪いな」
ぼやくように言いつつも、直後に抱き寄せられ耳元に吹き込まれたお願いは、走を発奮させるのに十分な破壊力を持っていて。
喜び勇んだ走はもちろん全力を以て応えたのであった。