各種寄せ鍋(CPごちゃ混ぜ)

□強さ宿る
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 イルミネーションに彩られた街並みは、寒さに負けずに活気に満ちている。クリスマスが近くなるこの季節、どこか華やぎを醸し出す空気が神童は嫌いではなかった。

 家族へ送る用のクリスマスカードを選び終え、一人で駅前の雑貨店を後にした目線の先を掠める桃色に目を見開いて神童は思わず振り返っていた。

 首元に淡いピンク色をまとったその人影は神童と同い年くらいの女性だった。栗色に染めた髪をカールさせ隣に立つ背の高い男性と何やら楽しげに会話をしながら歩いて行く後ろ姿が、心の中で別の人物と重なる。

 背格好なんかは全然似ていないのに、見間違えてしまったのは身に着けたマフラーが同じだったためらしい。

『ありがとう、大事にするね』

 そう言って受け取ってくれたあのマフラーを、彼女は今年も使ってくれているだろうか。

 夏前に離れてしまった恋人。去年の今頃はあんな風に笑い合いながら並んで歩いていたというのに。

 そんなことを思って微かに痛んだ胸を押さえて神童は歩き出す。もう振り返らなかった。後悔はしていないから。掴みたいと思ったものは、掴めた。否、掴もうとしている。今からひと月もしないうちに、自分はあの舞台を走っているのだ。

 彼女の決断を、自分の行動を、無駄にしないために。

 僕は、やるだけだ。



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