紅の涙
□第6話
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あの後、友達になった私とイタチはそのままソファで話し続けていた。
もっぱら新しく出来る家族のことで大盛り上がりした私たちは、生まれたら四人で写真を撮ろうと約束をしてその日は別れた。
次の日から家に招待されたり、街を探索するために手を握って走り回ったりして絆を深めた私とイタチは、今や親友と呼べるほど仲が良くなった。
そうして半年経った今、周りと比べると一際大きな家の縁側で、イタチと足をぶらつかせて空を眺めている。
「あ、見てイタチ!あの雲お団子みたい!あっちはほぐした魚の身!」
「食べ物ばかりだな。それにいやに具体的だ…というか魚の身…?」
笑いながら空を指差す私に雲を見て小首を傾げる。
その様子に笑いながら、乾いた喉を潤すために脇に置かれた湯呑みを傾けた。
喉を通る熱い感覚に、ホッと息を吐いて元の位置に戻す。
「それにしても、イタチ。病院に行かなくても良かったの?」
「ああ、まだ予定日まで少しあるから遊んで来いと言われてな」
「そういうことね。でもそっか、もう少しで弟君に会えるんだよね」
横にいるイタチはひどく優しげな表情を浮かべて、楽しみだと呟いた。
今、ミコトさんは出産の準備のために入院している。
すでにお腹の子も男の子だとわかるほどに成長していた。
「あれだけ大きくなるのよね…クシナさんのお腹も今よりもっとかあ」
出産を3ヶ月後に控える養母は、腹が邪魔で靴下も満足に履けなくなっている状態なのに大丈夫なのだろうか。
心配だけれど、そんなことは吹っ飛ばしてしまいそうなほどの幸せオーラを放つクシナさんには、大した問題ではないような気もしてきた。
それにしても弟くんはミコトさんのような美人さんかな、それともフガクさんのようなちょっと厳つい顔なのかな。
フガクさんとは先日家に遊びに来た際に挨拶をした。
居間に正座で鎮座している様は厳かで、挨拶も堅くなんだか息がつまるような思いだった。
あとでこっそりミコトさんから、ああ見えて子煩悩なのよと言われたが、どうにも見えない。
顔が怖すぎるし、笑ったところをその日見ていなかったからか怖いイメージがついてしまったしで少し苦手だ。
弟くんがお父さんに似ちゃったら、生まれてくる時もむっとした顔してるのかな…それはいやだなあ、ミコトさんみたいにいつも笑顔の可愛らしい子がいいなあ。
「意外とイタチとそっくりで、ほっぺたに線があったり…?それもそれで可愛くていいかも」
イタチの顔ってすっごい整ってて、特徴をあげるとしたら丸いほっぺたに線が入ってること。
他の人に線がついてたら気になっちゃうんだろうけどイタチだと全く気にならないんだよね。
うちはの人はみんな綺麗な顔をしているから、きっと弟くんも美人さんだろう。…まあフガクさんのように男前な顔立ちかもしれないけど。
「かわ…、サスケはきっと母さんに似てると思うがな」
「わかんないよ〜?もしかしたらもしかしてってことがあるかも!…というか、『サスケ』?」
「ああ、弟の名だ」
ふふんと得意げにーーあまり表情自体は変わっていないがーー笑うイタチに驚く。
もともと表情が表に出ないのか、初めて会った時以来なかなか笑顔が見られずに少し落ち込んでいたりしたのはイタチには内緒だ。
サスケ、サスケくんかあ。
「響きが良いね、カッコいい!」
「父さんから内緒で教えてもらったんだ、俺もいい名だと思う」
「ふふ、フガクさんすっごい考えてたんだろうな〜。うちは自来也様が考えてくださったから、悩んだりしなかったんだよね」
「伝説の三忍の…、強くなりそうだな」
「サスケ君もね。二人とも大きくなったら、手合わせとかするのかな〜楽しみ!」
縁側から立ち上がり笑いかける。
微笑みを返すイタチの隣に、明日からもう一人加わるのだ。
ああ、なんて楽しみなのだろう。早く弟も生まれてきてほしい。
そう願いながら、束の間の平穏を過ごすのだった。