紅の涙

□第7話
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ミコトさんの出産から、一週間と少し経った頃にうちは家に訪れた私は、床で体を休めているミコトさんの元へいた。

「無事のご出産、おめでとうございます!ミコトさん!あとこれ、波風家からのお祝いの品です!」

「ありがとう、ナギサちゃん。クシナたちにお礼をしないとね」

赤子を抱いて微笑むミコトさんに、私も笑顔が溢れる。

小さな手がミコトさんに向かって伸びているのを見て、そのまろさに喜びが湧き上がった。

「サスケ君…ですよね。可愛いですね〜、ぷにぷにしてる!」

「ふふ、抱いてみる?」

「わ、良いんですか!抱っこしてみたいです!」

そうして抱いてみると、腕に伝わる重みと柔らかさ、そして赤ん坊特有の甘い匂いが鼻に伝わる。

じっとこちらを見る、光を反射してキラキラと輝く漆黒の瞳に微笑みを返す。

「はじめまして、サスケ君。君のお兄ちゃんのお友達の、うずまきナギサって言います。これから仲良くしてね」

挨拶の代わりに、小さな手の近くに人差し指を差し出す。

すると、軽く触れた時にぴくりと反応した手がゆっくり近づき、私の人差し指を掴んだ。

あまりの手の小ささと、私の言葉がわからないのか小首を傾げる姿に、湧き上がるなにかが胸から伝わる。

「かわいい…!ふふ、お姉ちゃんの言葉、ちょっと難しかったね〜」

自然と笑顔を浮かべ、桜色に染まる頬をつつく。

嫌そうに眉間にシワを寄せ顔を背けるサスケ君は、今にも泣き出しそうな声を上げはじめた。

「あ、ああ、ごめんね!泣かないで〜!」

「あらあら、ナギサちゃん、サスケをこっちに渡してくれる?」

「はい、すみませんミコトさん!」

「いいのよ、私もちょっかいかけて泣かれそうになることあるから」

この子のほっぺた、真っ赤で丸くてふっくらしてるから触りたくなっちゃうのよね。

そう言いながら渡されたサスケ君を、慣れたように体を軽く揺らして優しく叩く。

だんだんと安らかな顔になっていき、寝てしまったサスケ君を見て感心の声を上げる。

「すごいですね…!すぐに寝ちゃいました」

「いつもはもうちょっとぐずるんだけどね。眠たかったのかしら」

「そうなんですか〜、ああ、私ももうすぐでこんな感じであやすことになるんですよね…!」

「そうね、3ヶ月後…だったかしら?楽しみね」

「はい、すっごく楽しみです!」

まだ見ぬ弟に想いを馳せる。

生まれたら、いろんなお洋服を着せて、オムツを替えて、寝かしつけをやったり遊んであげたり…

「楽しみだなあ…」

うっとりと空想にふけっていると、廊下に続く襖から声が聞こえる。

「母さん、ただ今帰りました」

「ああ、おかえりなさいイタチ。部屋に入ってきて、ナギサちゃんが来ているの」

襖を開けて入ってきたイタチは、楽しそうに笑顔を浮かべる私とサスケを見て何かを察したように頷く。

「サスケを見にきていたのか」

「そう、サスケ君とってもかわいいね!さっき抱っこさせてもらったんだけど、小さくてまるっこくて…とにかくかわいかった!」

サスケ君を起こさないよう小声で、嬉しさを最大限伝えるために身振り手振りをつけて話す。

「そうか、それはよかった。自慢の弟だからな、かわいいだろう」

ふふんと自慢げに笑うイタチに驚く。

笑うようになったとはいえ、こんな自慢をするようなことは一度もなかったから意外だ。

本当に可愛いんだな、羨ましい。

「いいなあ、私も早く自慢のできる弟が生まれないかな」

「もうすぐだろう、そう焦るな」

「そうなんだけど、イタチのそんな顔見たらすぐに会いたくなっちゃって」

そう言うと、イタチはきょとんとした顔でこちらを見る。

その表情がさっきのサスケ君のような意味がわからないといった風の顔が瓜二つで、ミコトさんと顔を見合わせて笑った。

「ふふふ、イタチ、サスケ君とそっくりね。やっぱり兄弟なんだなあ」

「?どういうことだ?」

「羨ましいってこと!」

分からなかったのか、小首を傾げるイタチにさらに笑いが溢れる。

こんな風に、私もナルトと過ごすことができるのかな。

生まれたら、私もイタチのように似ているところとか出てきたりして。

そうして私は、来たるべき日を家族と親友と楽しみにして待ち続けた。







人生で一番幸せになるはずの日が、最悪の一日となることも知らずに。


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