VERONICAMUS ※R18

□おかえり
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マヤは、勇者の星が爆発し、空が明るくなるまでの間まともに呼吸ができずに見上げいた。

星が消滅した直後は恐怖で体が凍りついたが、
まもなく極寒のクレイモラン地方にキラキラと光を運ぶ暖かい風が吹き風が吹いたので、確信することができた。

勝ったんだ、、、
兄貴たち

すごい

すごすぎる

どうしよう、、、


空にいるはずの勇者たちの姿は当然見えないので、心配と喜びで感情の処理が追いつかない。

待つしかないのはわかっているのだが、じっとしているとドキドキして心臓が吹っ飛びそうになる。
マヤは、雪原をそわそわ歩きながら何度も何度も空を見上げてはただの鳥を見つけ、ためいきをついた。

何時間経っただろうか。
さすがに首が痛いし寒さで震えだしてきたころ、キラリと金色に光る大きな鳥が見えた。

きたぁーーーー!!!
絶対あれだ!!!!

期待通り、大きな鳥はこちらにどんどん近づいてくる。
勝手に溢れた涙の温度でハッと我にかえる。

やばい!!!
また兄貴に心配かけるとこだった!!!

慌ててその辺の雪で顔を洗い、もう一度見上げると、信じられない大きさの鳥?え?クジラ?!

ちょっとまってもしヤバイ魔物系だったら絶対オレ食べられる!!!💦

マヤは焦って木の影に隠れ、巨大クジラが高度を下げ体を傾ける様子を伺った。背中に何か乗ってる。

あ!!!人?!
人だ!!!青い髪の!!!


「兄貴ぃぃぃいいいいいい!!!!!」

マヤが全力でジャンプしながら手を振ると、
ひゅーーーーーーーーーん
信じられない高さからカミュが飛び降りてきた。

ボッスシャァァ!!!
わぁ!

軽やかな着地とはいえ、大量の粉雪がぶっかかりよろけたマヤをカミュが思いっきり抱きしめた。

「ただいま」
「兄貴ぃーーーー!!!冷たいいい!」
「ハハハッわり〜!飛び降りたら早く会えると思ったんだよ///」
「いやおっせぇよ!!💢」

カミュはちょっと困った顔でエマの髪や肩についた雪を優しくはらってから、もう一度抱き寄せほおずりをしてきた。

「ごめんな」

「、、、( ̄^ ̄)、、、っていうか離せよっ」
「無理」

「チッ、、、しょーがねーなぁ」
「真似すんなよ💦」
「いしし!」

2人が幸せで誇らしい気分に浸っていると、
シュワァっとクジラが雪面に着地し、
勇者が1人で降りてきた。

げ!!勇者サマ泣きすぎ、、、

マヤがドン引きした顔で見ても気にする様子もなく、ポロポロ泣く勇者。
「グスっ!!!、、、カミュゥうう」
「おいおい、、、一生会えないみたいな空気出すなよ💦シルビアが盛大にウチアゲパーティーするって言ってただろ」
「そうだけどっ、、、毎日ずっと、冒険の始まりからずっと一緒にいたのにっ、、、僕はさみしいよ😭」
「はぁ、、、しょーがねぇな。」

っていう兄貴も普通に涙目だぞ💦
こんなウザい空気バッサリ切ってやろっと

「おい!2人ともそれ以上メソメソしたら変なウワサ拡散するからなっ!!」

マヤが睨み付けて脅すとピタと固まる勇者。
カミュが爆笑した隙に、マヤはスルッとカミュの腕からさっと抜けて後ろにまわり、カミュの背中を両手で押した。

「ちゃんと他のみんなにもサヨナラ言ってこいよっ」

「あぁ、ごめんマヤちゃん。他のみんなはもう送りとどけたんだ。その、、、近い順に。」
勇者サマが涙を拭いて気まずそうに笑った。

「えぇー!!会いたかったのに!!!」
「絶対泣くと思ったから、カミュを最後にしちゃった。。。長い時間待たせたよね」

は?兄貴と別れたら絶対泣く?
まさか、、、BL?!
マヤは勇気を振り絞ってカミュに聞いた
「勇者サマとどういう関係?!」

カミュは100人中100人が惚れてしまうような爽やかな笑顔で

「相棒だぜ」

と言って勇者サマに拳を突き出した。
勇者サマはやっと笑って手を出し、パシって力強く受け止めた。

「カミュ、ほんとにありがとう」
「あぁ。またゆっくり話そうぜ。お前も早く家族に会いに行ってやれよ。」


マヤは勇者サマがどうして泣かなきゃいけないのかわからなかったが、自分もさっきテンパって涙が出たのをふと思い出し、

「えい!」
「わ!冷た」

さっきのように雪を両手ですくって勇者サマの目に押し当ててやった。

「いしし!涙の跡が消える魔法だぜ!」
「ほんとだ」

勇者サマはマヤとカミュに向かってニコッと笑い返し、天空のフルートをふいた。

「呪文でパッと帰ったら?」
マヤがいうと
「いや、ルーラだと急すぎて心の準備ができないんだよ。みんなにあったら自分がどうなっちゃうか心配で、、、」
「え〜男が泣くなよぉーー」
「、、、が、がんばるよ」


そんなわけで、お茶を出す暇もなく勇者サマは飛び立っていった。

「ばいばーーい!またなぁー!!」

マヤはケトスが見えなくなるまでずっと手をふり、カミュは腰に両手をあてたカッコいいポーズで見送った。

さてやっと状況が落ち着いてきた。

「兄貴も疲れてるんだろ?!
って、、、うわぁ兄貴ぃー、、、」

マヤはまた雪を大量にすくって、カミュの顔にぶっかけた。

「泣くなよ!!キモすぎっ
、、、、、、兄貴、おかえり」

そのあと、風穴の洞窟に戻ってすぐ、カミュは少しお茶を飲んだだけで、バタッと眠ってしまった。
何もない住処だけど、この地域は火山の影響を受けて岩盤が暖かい。雪が入ってこなくて風通しもいいこの洞窟は、実はものすごく快適なのだ。

ずっとここで暮らしてきたけど、
こんな安心しきった兄の寝顔、マヤの記憶にはない。

いしし!

一個しかない毛布をかけ、カミュの隣に潜り込む。

、、あれ?、、、、なんか狭いッ

エマが知らない5年間と、勇者サマと積み上げた経験値で、鍛えられまくった硬い腕。
バイキング時代も強いとは思ってたけど、比べるに耐えない。

勝手に大人になってる、、、

なんか、ずるい、、、

今まで会えなかったぶん、いっぱいいっぱい構ってもらおうっ

そーだ!どこ連れてってもらおっかなぁー、、、

兄貴とお宝探し、、、
やばい楽しみすぎるーー!!!

、、、zzz


次の日、昼過ぎにやっと目を覚ましたカミュが教えてくれたのは、長い長い長ーーーーい冒険の話。勇者サマはずっと、今日みたいにグズグズいうことも、バカみたいに大笑いするようなこともなく、ずっとずっと気を張ってたんだって。
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