長編その1 @

□年末年始
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12月29日、香は那月に昨日作ったお菓子と真斗への誕生日プレゼントを渡した。

「ありがとうございます!真斗くん、きっと喜びます!」

那月は自分のことのように喜んで、自分からのプレゼントと香から預かった荷物を両手に抱えて仕事へ向かった。
今日も遅くなる。
わかっていたけど、やっぱり少し寂しかった。

「今日は何しよっかな〜…」

香はごろんとソファに転がって目を閉じた。
やっぱりそろそろ働こうか。
家に居て、那月のためにあれこれするのは楽しいし最近は料理もお菓子作りも上手になってきた。
だけど那月が忙しいと夜ご飯を食べる日も少なく、なんだか時間がゆっくり流れているような気がした。

「こんなゆったりな年末、初めてかもしれない…」

それはそれでいいのかもしれない。

そんなことを思いながら、香は大きく深呼吸をした。



歌番組の収録を終えて、ST☆RISHはカウントダウンライブのレッスンに向かった。
レッスンは21時まで続き、残すは明日の現地の場当たり、そして当日のリハと本番のみとなった。

「やれることはやったと思うけど、ギリギリまでより良くなるように頑張ろうね!」

嶺二がそう言うとST☆RISHは元気よく返事をした。
そして蘭丸が真斗に声をかけた。

「おい、真斗」
「はい」

ちょいちょいと指で呼ばれて、真斗は蘭丸の元に駆け寄った。

「なんですか、黒崎さん」
「あー…あれだ。最近のお前、またレベルアップしたみたいだな。よくやってると思う」
「…!く、黒崎さんからそのような…ありがとうございます!!!」
「声がでけえ!…ちっ、だがまだまだこんなもんじゃねえって思ってる。お前はもっと上にいけるって信じてるぜ」
「黒崎さん…!!」
「真斗。誕生日おめでとう」

蘭丸は真斗の肩をぽんと叩いてにっと笑った。
真斗が目を丸くしていると、誕生日の歌が歌われて音也とトキヤが大きなケーキを運んできた。

「おめでとう!マサ!!」
「おめでとうございます。聖川さん」

「…すっかり忘れていた…」

真斗は驚きながらも、嬉しそうに笑ってケーキのろうそくを吹き消した。
それぞれ誕生日プレゼントを渡し、写真を撮ってお祝いをした。

「真斗くん、これは香ちゃんからです」

那月はこっそり真斗に渡した。

「河嶋さんからもいただけるとは。ありがとう、とても嬉しいと伝えて欲しい」
「はい!伝えておきます!」

那月は香からのお菓子もみんなで食べましょうと広げ、楽しい誕生日会となった。
みんなで撮った写真を、那月は香に送ってあげた。


「わ、ふふ。楽しそう」

香は届いた写真を見て目を細めた。
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