長編その1 @
□年末年始
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30日、年末年始の買い物を終えて帰宅し、さっそくお節の仕込みに取り掛かかった。
ネットを見ながら、何とかそれらしいものが作れていくが、なんとなく身体が重い気がしてソファで一息ついた。
「張り切りすぎたかな」
少し休めば、と思って少し目を閉じたがしばらくして香は嫌な予感がした。
「…これは…なんか駄目そうな気がする…」
寒気と頭痛となんとなく身体が痛い。
まだ熱は上がってないが、香の経験からこれは確実にインフルエンザだ、とわかった。
「どうしよう…こんな大事な時に、那月くんにうつすわけにはいかないし…」
香はマスクをして動けるうちにと手の触れたところを消毒して回った。
そうこうしてるうちに、どんどん熱が上がっていってあっという間に39度になってしまった。
「…ど、どうしよ…と、とりあえず那月くんに…」
香は那月に、たぶんインフルエンザにかかってしまったこと、出来るならしばらく翔の家に泊まってほしいことをLINEした。
LINEしてから香は布団に入り眠ることにした。
目を閉じてどのくらいたったのかわからないが、那月からの着信で目が覚めた。
「…ぁぃ…」
『香ちゃん、具合はどうですか!?』
「…熱が、結構あって…ごめんなさい、こんなときに…」
『謝らないでください。病院は?行けそう?』
「…こ、この辺の休日診療が、わかんなくて…」
『ああ、後で調べます。1人で行けそう?僕が帰ってから夜間診療に行きますか?』
「ひ、1人でらいじょうぶれす、それで大変申し訳ないんれすが、しばらく来栖さんちにお泊まりお願いできませんか?」
香の言葉に那月はうーんと悩んでしまった。
風邪をひいている香を1人にするわけにはいかないという気持ちと、とはいえライブ前に自分もインフルエンザにかかってしまったら皆に迷惑をかけてしまうという思いで考えこんでしまった。
「…那月くん、私は1人で大丈夫ですから…」
『香ちゃん…』
「ご迷惑おかけしてしまって…ごめんなさい…」
電話の向こうで那月を呼ぶ声が聞こえた。
『あっ、はーい!…ごめんね、香ちゃん、また後で連絡します。病院も調べておきますね』
「はい、ごめんなさい、忙しいのに…」
香は電話を切って、またすぐに眠りについた。
「那月、どした?」
「翔ちゃん、うちの近くの休日診療ってわかります?」
「香さんなんかあったのか?」
「たぶんインフルエンザかもって…」
「ちょ、ちょっと待ってろ今調べるから」
翔はすぐに調べて那月に診療所の場所をLINEで送り、那月はそれを香に転送した。
「1人で大丈夫なのか?」
「大丈夫だからって…僕もすぐは帰れませんし…」
「だよな…」
「それで、香ちゃんが出来れば翔ちゃんちに泊めてもらってって」
「ああ、だよな。それは全然構わないけど…」
「でも、1人にしてしまうのも…」
「うーん…」
「ショウ、ナツキ。なにしてるの」
「あっ、藍ちゃん」
「わり、すぐ戻る」
2人は藍に呼ばれて慌ててレッスンへ戻った。