長編その1 @

□お泊まり2日目
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次の日、アラームが鳴り始めると香はそれをすぐに止めた。
香を抱きしめたままの那月の腕からゆっくり離れてベッドから抜け出した。
腰が少し重たくて、仕事に行きたくない気持ちでいっぱいだったが香は冷たい水で顔を洗って気合いを入れた。
化粧をして髪を結び、朝ごはんを作っていると那月が起きてきた。

「おはようございます」
「おはようございます、ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
「いいえ、起きようと思ってましたから」

眠い目を擦りながら那月は香に抱きついた。

「もう行っちゃうんですね」
「朝ご飯は食べますよ」
「食べたら行っちゃうんですね」
「はい」
「寂しいです」
「私も寂しいです」
 
少し身体を離して眉を下げながら香を見つめていたが、香も少し眉を下げると那月はなんとか微笑んで香にキスをした。

「困らせちゃいましたね」
「そんなこと。寂しいのは、同じです」
「また、会えます」
「はい」

ふふっと笑い合い、もう一度キスを交わした。
朝ご飯を食べて、香は出勤の準備を整えた。

「香ちゃんはかっこいいですね」

キッチリとアップにした髪を見て那月は言った。

「お仕事してるとこ、見たいです」
「お仕事中はボロボロですよ。化粧も落ちちゃうし」
「それでもきっと綺麗です」
「そんなこと言ってくれるの那月くんだけです」
「今度見せてください」
「え?」
「香ちゃんのお仕事姿の、写真、撮れたら」
「そんなのでいいんですか?じゃあ今日、撮って送りますね」

香はそう言って那月と指切りをした。
名残惜しいと、何度も何度もキスをしてやっと香はエレベーターにのりこんだ。
一人残された那月は、やけに広く感じる部屋を見回してため息をひとつついた。

「次は、いつ会えるんでしょうか…」

那月は香が飲んでいたカップを手にして小さく呟いた。
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